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第六十六話:国際政治の地殻変動・本音優先のビジネス思考

2016年12月23日

ブッシュ前政権の中東戦略ミスを“変える“と口先だけは勇ましく登場したオバマ政権でしたが、
この8年間における“建前主義外交”の失敗続きから、アメリカ一極支配の世界が崩れ始め、
中東の混迷を一層悪化・複雑化させる一方で、NATOの弱体化がロシアのウクライナ東部占拠を許し、
ひいては中国の南シナ海進出や北朝鮮の核実験頻発などアジアにまで、国際紛争の火種を広げ、
こうした問題解決に全く機能出来ない国連の無力化も相まって、
今や世界は乱気流の時代へ突入してしまったようです。
そんな中で、流石のアメリカが、オバマ建前主義政治を後継せんとしたクリントンではなく、
過激な発言の是非はともかく、基本的には“本音のビジネス思考によるアメリカ第一主義”を直訴した
トランプを次期大統領に選んだことで、一挙に国際政治の地殻変動が加速されました。
これまで、米国の思惑を気にかけず、思い切った言動をとって来た“強権政治リーダーたち”即ち、
習金平、プーチン、金正恩らが、このところ「来春のトランプ政権誕生に向けた模様眺め」と
「本音の折衝待ち」を決め込んでか、トランプとの直談判への期待感からか、
音なしの構えに転じたようです。
 
筆者が思うに、現下のような乱気流下の国際政治の舵取りは、建前論議の腹の探り合いではなく、
本音と本音のぶつかり合い、いわばビジネス思考に基づく”損得勘定“が表に出てくる分かり易い、
納得のゆく内外政に向かうのがあるべき姿ではなかろうか、ということです。
第三者的に見ても、トランプ、プーチン、習、それに若輩すぎ、弱小国家のトップに過ぎないが、
北朝鮮の金を加え、総じて彼らに共通するのは“強いリーダーシップと強靭な突破力・決断力”の
持ち主たちであると言えそうです。
これに加えられるのが、メルケルでしょうが、彼女はあと一年で失権しそうだし、
その後の欧州は、中道から右寄りへと大きな政権交代が見込まれ、当分の間、抜きんでた
強いリーダーが出現するまで時間がかかりそうです。
そこで、G7で唯一の長期政権の座にある安倍が、強いリーダーたちの仲間入りができるか、
また彼らと本音の折衝が出来るかに、我が国の未来がかかっているのは間違いないでしょう。
政治が建前的な言葉のゲームから、ビジネス的な“実益(国益)を希求する”直談判、商取引の
世界へと転化しつつあるだけに、安定政権、長期政権を背負って立つプーチンと
安倍には期待が膨らみます。
 
時恰も(あたかも)、日露首脳会談が持たれました。我が国マスコミや大方の評論は、
北方領土返還(せめて二島でも)への甘い期待が満たされなかったことに加え、
経済協力は食い逃げされるだけとの単眼思考、近視眼的、悲観論が挙って(こぞって)掲げられ、
安倍外交の真意を多角的複眼思考で汲み取り、本音の長期戦略まで論評したものが
略(ほぼ)皆無であったことに聊か(いささか)の疑念を禁じえませんでした。
ここで、政治家が大きな決断を実行するには、政権の安定と支持率の維持が肝要なことから、
両首脳の任期について考えてみましょう。プーチン大統領の任期は2018年、
もし再選されると次の2024年まで任期が伸びます。
一方、安倍首相も2018年が任期切れですが、自民党総裁任期が3期9年まで延長されそうなので、
おそらく2021年までトップの座に居続けそうです。
お互い、二年後に再選を控えた中で、国益をかける大決断を今手掛ける訳に行かないのが、
今回の折衝の限界だった訳です。
当座は経済協力を本格化させることで、両国民間の積年の蟠り(わだかまり)を氷解させながら、
信頼感を醸成する時間稼ぎが必要なのです。
その後、2020年の東京オリンピックで世界が盛り上がった翌年、日露平和条約が調印されるなら、
極めて良好なタイミングではないでしょうか。日米安保と微妙な絡みを持つ北方領土の返還なり、
日露外交は難問であり、アメリカの思惑も無視できません。
そのトランプ大統領の任期が、2020年(二期2024年もあり得る)ですから、
三首脳の本音の折衝には、4~5年の猶予があるということで、
時間的余裕が生まれるという訳です。外交は一種のビジネスにも例えられるでしょう。
種を蒔けばすぐ実が生る訳ではなく、「桃栗三年、柿八年」の諺(ことわざ)にもあるように、
事が成就するには、時が解決することもあるのです。
 
安保の問題ですが、日米安保一辺倒では我が国の防衛には、不安があり、現に中国の脅威は止まず、
最近でも尖閣諸島接続水域に300隻の漁船と15隻の公船が入り、
さらに三隻の海警局警備船が領海内へ侵入したり、領空に中国軍の戦闘機が接近を繰返し、
また東シナ海ガス田共同開発合意を無視して、軍事転用可能なプラットホームを16基も
設置するなど膨張ぶりは留まらない状況です。
また、北朝鮮の核実験も更なる脅威になっております。
米国の威を恐れない両国には、ロシアの抑えが欠かせないので、ここは日露防衛協力が急がれます。
その意味でも、今般、外務・防衛閣僚級会議の再開に合意した今般の日露首脳会議の意義は
評価されるべきで、トランプやNATO加盟国の理解取り付けを急ぐ必要があります。
尤も(もっとも)最近のトランプ発言から見えてきたのは「親露・反中・反欧」路線で、
中東や欧州テロはロシアにある程度任せ、通商実利をアジア極東に求める姿勢が垣間見えます。
政権移行チームや閣僚候補の素性からも、情報網の重点を中華系から
ユダヤ系人脈に移したと見て良さそうです。
背景には、米国産シェールオイル・ガスの豊富な供給量から、中東エネルギ~資源依存度が
激減していることと、中国との通商ロスの解消を急ぐ事情もあるようです。
 
経済協力8項目、68細目プランを概観しますと、マスコミが騒ぐような
「ロシアの食い逃げを許すのか?」といった論評の焦点ボケが明白です。
協調融資の3千億円とて、少なくとも、ODA的な一方的投融資で国民の税金を使う話ではなく、
あくまでも民間企業が前線に出た“共同経済活動”であって、
医療・インフラ産業振興・郵便物流システム・地下海底資源採掘、
農水産業合理化・人的交流・教育・中小企業振興など、我が国の先端技術・ノウハウを生かして
ビジネスの実利を無限に上げる大チャンス到来と捉えるべきだと思量します。
北方四島における”特殊な制度下“の共同利用は、陸上のみならず、水域まで含めた
総合的な事業開発振興につながるもので、漁業資源確保、水産加工業、物流サービス・観光産業促進など、
多大の国益につながるはずです。
長年にわたる我が国の対ソ・対露外交の空白がブレーキとなり、かつての「日ソ漁業協定」が
今では全く有名無実化しており、我が国漁船が何度も拿捕されたり、船長殺害事件まで惹起し、
漁獲量が激減した史実が物語ってくれます。
しかも近年は、ロシア側の水産加工、販売能力不足と労働力不足に付け込んで
中国や南北朝鮮が、シベリア経由でじわじわと人を送り込み、缶詰工場を設営し、
夫々自国市場向けに輸出して、我が国の権益を損ねてしまっているのですから、
彼らに代わって、我が国独自の先端漁獲技術・水産研究力を発揮し、
豊富な魚貝・海草の宝庫を最大限活用すべきなのです。特殊な制度の確立は、
かなり難解な外交折衝になりそうですが、あくまでも四島の帰属や主権を棚上げし、
できる限り対等な立場で日露の経済活動を円滑なものとし、事業益を分かち合うことで、
両国の信頼観を醸成し、平和条約への道筋をつけることが望まれます。
 
一方、サハリン地区、シベリア地方を始めとするロシア全般に亘る(わたる)経済協力・開発促進に
関しても明るい未来展望が期待できそうです。
我が国の中東へのエネルギー依存度は依然として高すぎ、その所為(しょい)もあり
比較的高価な仕入れ価格を強いられているままでは、ロシアの天然資源供給源を確保しておくことは、
地政学的・国防的にも極めて有利であり、合わせて
が国の先端インフラ土木建設技術、宇宙開発、鉄道・自動車・造船・機械・鉄鋼に跨る
ソフトハード両面の事業開発、ロシアの喫緊の課題である健康長寿に資する医療医薬と病院設営など、
お互いに共存共栄できる素地が多々あるものと見受けられます。
そのための人材交流に強力な武器となるのが、旧島民、経済人、公務員、科学技術人、学界 等々の
ビザなし入出国管理システムの導入でしょう。
こうした地道な経済協力を突破口とする日露間の信頼醸成が一歩一歩前進した暁には、
(まず2年後に、安倍・プーチン両者が再選を決め、4年後の東京オリンピックの終了後)
愈々両首脳の強いリーダーシップで、平和条約調印へのステップが踏み切られるものと期待する次第です。
 
米経済誌フォーブス最近版による「世界で最も影響力のある人物」ランキングによると、
プーチンが一位(四年連続)、トランプが二位(急浮上、オバマは3位から急降下)と発表されました。
ロシア経済が原油価格下落と需要減およびG7制裁もあり
経済低迷(GDPマイナス成長、国民所得11%減、貧困率増15%)に陥っており、
政権支持率が80%と高率ながら、支持基盤のシロビキ(武闘派)が領土・安保に神経質である今は、
経済成長第一に徹する他なさそうで、その意味でも我が国の出番が到来したと考えるべきでしょう。
同じく、米国第一のトランプも、減税、公共投資、規制緩和で景気浮揚を狙っており、
両トップの連携も勘案すると(人気急落の習・メルケルの中独経済ゲームの衰退に代わって、
来年以降は日米露に焦点が移行し)、安倍外交と日本経済に追い風となる可能性が
高まってきたと考えます。
トランプの政権移行チームの要人・ピーターテール(ペイパル創立・フェイスブック取締役の大投資家で、
SNSによりマスコミ界に対抗し勝利した)は、クリントン支持だったIT業界トップ連中を
目下急速にトランプ派に取り込み中で、すでにIT業界にブーメラン現象(一例が孫正義の大型投資)が
起き始めています。
あれやこれや悲観論が飛び交う中、来る年に向けた”希望明るい話題“を提供する次第です。
恙ない(つつがない)ご越年を。

high rise buildings during daytime

最終更新日 2021年10月31日

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