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第五十九話:「北朝鮮・中国に煩わされず、アジアをリードせよ」

2016年4月7日

1. 孤立する北朝鮮、八方ふさがりの中国

 

 北朝鮮が水爆実験(自称)や長距離弾道ミサイルを次々発射して、
国際社会を揺さぶっていますが、これは他国を挑発する為だけと捉えるよりも、
経済的にも外交的にも、益々孤立する自国の安全保障上の課題を解く
唯一の手段・核武装計画の工程と考えるべきではないでしょうか。
中朝関係も一見ギスギスしているかのように見えますが、実態は中国の満州地域は貧しく、
北朝鮮経済との国境線を跨ぐ密なる連携は分離不可の状況にあり、地政学的にも、
在韓米軍やロシアのプレゼンスを加味すると、極めて重要な防衛緩衝地帯と
言うことになるので、両者の同盟関係は容易に崩れそうもありません。
従って国際社会が、これまでも何ら実効を上げていない”経済制裁“で締め上げようとしても、
仮に金正恩体制が倒れても、彼の顧問団がその体制を存続させるでしょうから、
問題解決には至らないと思われます。
 
尚、北朝鮮の内政に混乱が生じ、仮にクーデター等が起こるとしても、
この国自体の存続・維持を戦略目標とする中国は、親中派政権の確立と
支援に全力をそそぐ筈で、その妨げとなるであろう米韓日の介入阻止を
最優先させるでしょう。
米国や国連は、本格的軍事作戦に躊躇し時間稼ぎに陥る中、中国人民軍は素早い派兵を
正当化させ、核・ミサイルを確保するであろうというのが、一般的な見方だと言えます。
ましてや、邦人保護や拉致問題しか眼中にない我が国の慎重対応からして、
自衛隊派遣の初動に後れを取るのは見え見えで、大きく国益を損ねることを避ける為には、
この際、下手な動きを差し控えるのが上策と覚えます。
 
一方の中国ですが、全人代を終えた北京に春の嵐が吹き荒れ始めており、
習近平独り舞台が消え、最高指導部内に不協和音が目立つようになってきて、
北朝鮮を恫喝することも庇うことも叶わないジレンマに落ちいっている他、
もっと重大な外的障害が続発してきて、愈々国家として孤立化を深め、
八方ふさがりに追い込まれているのが現状です。
まずは、南シナ海の領土問題で争ってきたベトナムとフィリピンに加えて、
このところインドネシア、シンガポール、マレーシアなども相次いで、
ASEAN会議等の機会をとらえ、米国を巻き込んで南シナ海航行の自由と
国際法順守を求め、対中警戒感を強めております。
 
次いで台湾における民進党への政権交代で、蔡英文総統は一応「中国とは話し合いによる
現状維持」を表明しつつも、一方では日米との民主主義・自由経済を共有する
姿勢を明言するなど、台湾の独自性を国際社会に向け発信していることは、
民主化を求める香港独立運動を挑発することとなり、中国の大いなる懸念となりそうです。
ましてや、これまで日米と中国を等間隔で見据え、対中関係を重視する外交を展開してきた
朴クネ韓国大統領が、ここへ来て一挙に米日韓同盟へと政策転換し、
北朝鮮のミサイル実験後は、米国との軍事演習強化をすすめており、
中国にとっては頭痛の種と化しています。
 
習国家主席は共産党総書記兼中央軍事委員会主席として人民解放軍も率いており、
その組織改革を通じて、旧江沢民派や前胡錦濤派を強引な反腐敗キャンペーンで
失脚させ、或いは配置転換させるなどにより、一層の権力集中を狙ってまいりましたが、
そこにも反動と腐敗が絶えないようで、軍事機器開発技術の遅れや
軍事訓練の不徹底などが重なり、一人っ子世代兵士の技能とモラルの低下が
表面化しており、こうした内的障害も習政権の手枷足枷となっています。
一説によると、習主席唯一の実績とされる
腐敗摘発を実質的に仕切っているのが盟友の王岐山であり、規律委員会を牛耳る
王氏が真の実力者として急浮上して来たようです。

 

2. 中国経済は「新常態」どころか「辛非常態」

ここ数年間で発生している中国の不動産や株のバブルとか供給過剰、過大在庫の特徴は
「高成長がまだまだ続く」と言う錯覚がもたらした過剰投資にあり、
その減退と静かに拡大してきた大口資本逃避
(主として米、日、英、独の株式や不動産への資金・資産移動)により
経済がバランスシート不況の長いトンネルに入ってしまったことにあります。
中国経済を悩ますもう一つの難問は過剰な人民元売り投機による元先安危機で、
為替操作と元の国際化政策とのジレンマは、世界的な通貨危機のドミノを起こしかねず、
或いは外貨準備が1兆ドルの急減(年間3割減)しており資本移動の規制に及びかねず、
国内規制は意のままでも、海外市場にまで規制がかけられない中国自らに解はなく、
国際秩序の準備もないことは、世界経済にとって大難事となっております。
 
中国の場合、国有企業や地方公企業の比率が高く、申告値の積み上げに過ぎない
各種統計数値の信頼性が極めて低いので、経済推移の実態が捕捉されないまま、
不適切で場当たり的な施策しか打てないことが最大のリスクとなって居るのです。
既に金融不動産業や鉄鋼造船等重厚長大産業の大型破たんが危惧されているにも拘らず、
国家による粉飾と強引な経済運営が許されて、改革開放に背を向け、自由化・構造改革を
蔑にしてきた以上、「AIIBは、国際金融分野での脱市場原理の宣言」とさえ悪評されるように
社会主義市場経済を軌道修正し、再び共産主義計画経済・社会主義的統制経済へと
逆行し始めたのではないか、との囁きが聞こえてきます。

 

3. ドル基軸を揺さぶるユーロと人民元・資本主義の変質が危惧される

中国経済は、負債総額が3千兆円にも上るとされ、仮に年次利払いだけでも
150兆円にも達する以上返済不可能とも思われますし、人民元を刷り撒くって、
ゾンビ化した多くの国有企業の延命を図って来たという暗雲のなかにあるからこそ、
あえてAIIBという超高リスクの銀行を主導して立ち上げたのではないかと考えられます。
IMFが、人民元を特別引き出し権SDRに加えることを決めるにあたって、
中国政府に資本の移動の自由化、経済指標の透明化、変動相場制への移行を約束させると
述べてはいますが、絶えず恣意的な市場操作を繰り返す人民銀行が、容易に約束を
履行するとは終ぞ覚えず、おそらく煙に巻く作戦を取り続け、特権・利権だけ先取りして、
追い込まれると放り投げるのが落ちでしょう。
 
世銀やADBは融資先、融資案件に環境や生物多様性の保全など厳しい条件を求めるのに対し、
AIIBはより安易な条件で融資を採択する方針だそうですから、その本質は、格付けも低く、
極めてリスクの高い銀行であり、資金調達コストもかなり高くつくものと想定されます。
また、世界経済が中国主導のAIIB参加国群によって、閉鎖的で分離された
特殊な経済集合体に変質してしまうと、グローバルに担保されてきたヒト、モノ、カネの
自由な動きが阻害される恐れが大であると危惧致します。
既に、米国連銀の一部総裁や日銀からコメントが出ているように、AIIBが組織的に
中国の管理下に置かれている以上、中国共産党による資本移動の裁量が止められない恐れは、
避けられそうもありません。

 

4. 日本は、減速する中国に代わって、アジアの成長をリードしよう

共産主義独裁国家中国は、近代法治国家とは言えないにも拘らず、独裁者を排除してきた
ドイツやロシア、それに資本主義の本家英国、王制を捨て人民主権を勝ち得たフランスなどが、
不用意にも習近平独裁下のAIIBに参加したことは理解できません。
敢えて推理を働かせて見えてくるのは、欧州圏の経済不況が思いの他深刻化しており、
対中債権・債務が巨額に達し手が引けなくなっている為か、背に腹は代えられないのが
真相ではないでしょうか。さらにもう2点の余儀ない理由を挙げておきます。
まず、欧州にとって、中国の軍事的脅威や資源競争が、我々近隣アジア諸国や太平洋を
挟んで対峙する米国に比べ相対的に低いことが、全体主義国家に対する警戒心を
緩和しているのかもしれません。次に、元来アジアの現実に関心がない上に、中
国の情報統制を諸に受けている欧州の政財界とメディアには、
日の当たる中国のみが見えていて、隠された日陰の失態や危険性には
無知蒙昧なのではないだろうかと思われます。
 
かくなる上は、近隣国として経済競争上も知的財産権や商取引法の無視とか、
国際法を順守しない中国の覇権主義による領海侵犯と軍事的な脅威にさらされている
我が国としては、同じような苦境を強いられているASEAN諸国との同盟戦線を張り、
情報不足や無関心から、中国に甘すぎる欧米や親中諸国に向けて、
もっと強く警告を発し続けることが肝要かと思います。少なくとも、日本を孤立化させ、
悪玉日本人イメージを拡散せんと、捏造された歴史戦争や国連での悪巧みを仕掛けてくる
中国広報戦略に怯んでは絶対にいけません。
中国の影の悪相を訴求し、法と秩序を順守する平和・文化国家・商工業国家日本を
世界に向けてアピールし続けることが、
我が国の国際的評価を勝ち得る唯一の正道であると確信する次第です。
中国が減速しようと、インドやアセアン等、アジア経済はまだまだ前途洋洋です。
アジア全体としては、今なお成長途上にありますが、日本がリーダーシップを発揮して、
市場改革を進める諸国との連携を深めることによって、更なる世界経済の成長力を高める為、
加担すべき時が来たことを自覚すべきでしょう。 

city skyline during night time

最終更新日 2021年10月29日

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