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長寿社会の勝ち組となるには(その31) 腸内微生物叢(フローラ)バランスの崩壊 炎症性腸疾患(IBD)が癌の発現、進化を促進する

2019年5月5日

NHKの人体シリーズ第1回(腎臓)で腎臓疾患の主原因が医薬品と
言い切った山中伸弥博士も第2回(腸)では、癌を誘発する腸内微生物叢(microbiome)
のアンバランスが抗生物質の乱用と生菌サプリメントの過剰摂取を原因とするとは
言えませんでした。
公平な、消費者ファーストの姿勢は変わらぬと思いますが
抗生物質は人類を微生物感染症から救った功績が大きく、現在でも重篤な
感染症治療など、医療には欠かせぬ重要医薬品。
負の部分を指摘したくなかったのでしょう。
癌の発症と進化、転移に抗生物質は深く関わっています。
腸内微生物叢研究はまだまだ途上です。
先回のこのコラムで掲載した「腸内微生物叢移植」。
現段階ではこれしか確実な方法が無いことがお分かりと思います。

 

1.腸内微生物叢(腸内フローラ)研究が飛躍的に進展しています

様々な体の部位の炎症と遺伝子の傷害、変異経路に微生物が介在していることは
疫学的に知られていましたが、腸内微生物はあまりに多面的な動きを示すために
その正体が掴みきれませんでした。
最近になり研究が大きく進展しているのは、顕微鏡など先端的な実験、検査機器と
遺伝子解析技術の進歩によるものです。
 
当初、腸内微生物は有用性より、*ピロリ菌など有害性が疑われる特定の微生物に
焦点を絞って研究されてきましたが、最近では遺伝子変異を抑制する
腸内細菌の有用性に焦点が絞られていました。
腸内微生物叢(microbiome:または腸内フローラ)の複雑な構成菌の詳細が*遺伝子解析技術の
進歩で可能となったからです。
特に遺伝子解析が進んでからは*片利性微生物の免疫力強化作用、代謝補助作用、
栄養吸収作用などが研究されています。
*遺伝子解析技術:DNA sequencing technology
*片利性微生物:commensal bacteria
*ピロリ菌:Helicobacter pylori,

salad on bowl
 

2.癌細胞の腫瘍化を防ぐ腸内微生物叢(フローラ)

人体を棲み処とする微生物は百兆を超え、栄養、代謝、人体生理、
免疫力機能に大きな役割を果たしています。
健康な人ならば、良好な腸内微生物叢のバランスにより、経口による様々な
病原菌の侵入を防ぎ、癌細胞の腫瘍化(tumorigenesis)を防ぐことができます。

ところが何らかの作用が働いて均衡が崩れると、腸内毒素症(dysbiosis:ディスビオーシス)を生じ、
癌を含む様々な病状を呈しますが、最近の研究で腸内毒素症が
癌の初期と進化期(cancer initiation and progression)に大きな役割を
果たしていることが判明しています。
ところが、疫学的な事例や動物実験で判明してきた腸内毒素症と癌の関わりも
医療に役立てるまでには至っていません。
健康な人の腸内微生物叢の構成、バランスを崩した人の腸内微生物叢の
構成は千差万別。
基準が把握できない故に、なかなか勝利の方程式を作れないのが実情です。

 

3.腸内微生物叢(腸内フローラ)の理想的な均衡を得るには?

微生物の棲み処は主として口腔内(oral cavity flora)、皮膚(skin flora)、
腸内(gut flora)、膣内(vaginal flora)が知られています。
この内でもあらゆる癌の予防に最重要といわれる腸内微生物叢(腸内フローラ)の
理想的な均衡の内容はまだまだ研究途上。
年齢、性別、食習慣、遺伝子ばかりでなく様々な変動要素が推定されていますが、
現段階で公式を見出すには至っていません。
民族は関係ないという説もありますが、これも定かではありません。
 

4.腸内微生物叢の有用菌特定と、その必要量は研究途上

健康な腸内微生物叢バランスの把握も困難ですが、それを構成する
有用菌の同定とその作用機序の立証も簡単ではありません。
100兆を超える腸内細菌の中で、大きな割合を占める3種の有用微生物
が知られており、多くの研究がこれを中心に解明を進めています。
厄介なのは見出している有用菌が有害性を持つ場合があり、その境界線に
一定の法則が無いために、詳細が不明なことです。
(整腸薬としてビフィドバクテリウム、ラクトバチルス、エンテロコッカスを
混合したものがあります)
*具体的な有用、有害(といわれている)腸内細菌は次の記事でご紹介します。

 

5.腸内微生物叢バランスの不均衡が招く炎症性腸疾患(IBD

生活習慣病などを発症した患者に多く見られるのが腸内微生物叢の微生物種群の
均衡が破れて発症する炎症性腸疾患(IBD)です。
軽視できないのが、その中で代表的な腸内毒素症(Dysbiosis)からの癌発症。
この因果関係を重視して、多くの研究がありますが、コロラド州立大学生物学科の
*アリッサ・ウィットニ-教授が食品栄養科学部など関連部署との共同研究で
病因学的に因果関係を得ることに成功しています。
「Cancer-Promoting Effects of Microbial Dysbiosis」

実験では腸内微生物叢の微生物種群の均衡が崩されると腸内毒素症が生じ、
炎症により大腸、胃、膵臓、胆嚢、咽喉、食道など様々な部位が
病原に脆弱性を示し、癌などの症状が出ました。
*Dr. Alyssa K. Whitne:Department of Biology, Colorado State University,

 

6.炎症性腸疾患(IBD)が癌の発現、進化を促進する

炎症を原因とする結腸、直腸、小腸、大腸など
炎症性腸疾患(IBD:inflammatory bowel disease)には
腸内毒素症(Microbial Dysbiosis:ディスビオーシス)のほか
大腸炎(colitis)、潰瘍性大腸炎(ulcerative colitis)、クローン病(Crohn’s disease)、
小腸細菌異常増殖(サイボ:SIBO:small intestinal bacterial overgrowth )などが
あります。
炎症性腸疾患(IBD)の諸病は症状が似ています。
腹痛、下痢、嘔吐などの症状は一見ありふれていますが、
死者も多く癌(がん)の専門家は大腸癌(colorectal cancer)など重篤な症状に
繋がる病として重視しています。
米国では29,000名の患者が腸内毒素症(Microbial Dysbiosis:ディスビオーシス)の
クロストリジウム・ディフィシル腸炎などで亡くなりました(2011年統計)、
*クロストリジウム・ディフィシル腸炎(Clostridium difficile colitis:CD)

 

7.健康な腸内微生物叢バランスを保つ当面の対策は?

腸内毒素症の予防が困難なのは、最大の原因が*抗生物質(第8項参照)や
乳酸菌などの医薬品、サプリメントとみられているからです。
その防止には医薬品、サプリメントの投与を中止する手段しかありませんでした。
 
欧米の専門家が推奨するとりあえずの対策は
「喫緊の場合以外には抗生物質を避ける」
「腸内微生物叢のバランス維持は医薬品やサプリメントでなく
発酵食品や発酵菌などの増殖を促進する日常的な食材、食品のみで保つこと」
ですが、癌治療に携わる多くの医師がこれに反しているそうです。
抗生物質は癌を誘発したり、抗がん剤の効果を減じたりする欠点が
知られているにかかわらず、抗がん剤の副作用抑制(下痢など)に
(やむを得ず?)多用されています
有益細菌を殺さない抗生物質、単独で有益機能を発揮し活動できる細菌の同定が
すでに米国の有力で先端的ないくつかの研究所が協力して作業を開始しています。
時期は予測できませんが期待して良いでしょう。

 

8.(参考)抗生物質投与と単独生菌種類摂取が癌を悪化させる

欧米の専門家は抗がん剤の副作用抑制のための抗生物質投与と
単独生菌種類(isolated live bacteria)のヨーグルトやサプリメントが
癌(がん)を悪化させていると指摘しています。
 
また世界各地で日常的に発症している炎症性腸疾患(IBD)は
腸内微生物叢微生物種群の不均衡が主因であることが多いに関わらず、
多くの医療機関が治療に微生物種群を殺す抗生物質や、摂取過剰となりやすい
(腸内微生物叢バランスを崩す)単独生菌種類のサプリメント、医薬品を投与します。
抗生物質により腸内微生物叢の微生物種群が殺されると、さらにバランスを失った
腸内微生物叢は炎症性腸疾患(IBD)をより悪化させ、有用微生物による
免疫細胞活性化作用が機能しなくなり、悪性腫瘍、癌の発生、進化を助長していると
専門家は指摘しています。

最終更新日 2021年7月18日

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