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第三十〇話:「ソフトパワーはハードパワーに勝る」

2014年10月29日

“ペンは剣よりも強し”とか“財貨は兵器より重し”は良く耳にする西欧の格言ですが、21世紀の今、改めて吟味すべき教えではないでしょうか。

20世紀前半こそ、先進大国間では軍事で覇を競う二つの世界大戦が起こりましたが、その後の半世紀は、核武装競争~東西冷戦を経て、国家間の競争は経済戦争へと昇華されて来ました。

この間、わが国は日米安保の傘の下、経済至上主義を謳歌出来たお陰で“Japan As Number 1”と囃される経済大国へと上り詰めたのでした。

しかしながら、戦後教育の失策もあり、道義と文化立国の大切さを忘れ、経済成長後の内政の混乱や外交戦略の稚拙さも相俟って、次第に国際評価を落としてしまったようです。

つまり、片手落ちの生半可なソフトパワーでは、真の国際的リーダーにはなり得なかったのです。ましてや、中国やロシアという軍事大国や、同じく核を持つ北朝鮮や、史実を曲げてまで執拗な外交戦略を仕掛けて日本を貶めようとする韓国のような隣国に囲まれている我が国が取るべき唯一の道は、経済力、文化力、外交力をフル装備した「総合的ソフトパワー」で世界へ雄飛すべきだと考える次第です。
 
先ずは、経済力アップ、即ち日本経済の再興が急務でしょう。

それには、加工貿易、輸出立国といった大量生産志向、価格競争といった前世紀の成功要因から脱皮して、最新のマーケティング優先の経営に徹すべきと思います。

商品企画・販促など古いマーケティングやドラッカー等一昔前の経営理論と違って、ポーターやコトラーが主導する21世紀のマーケティング論は、心理学、政治、哲学など事業全般にわたる総合的経営学です。

画一的なグローバル市場なんて言う空想世界など有り得ないにも拘らず、多くの日本企業が90年代以降に陥った失策の背景もこの辺にあったのではないでしょうか。21世紀の企業が求めるべき世界のマーケットとは極めて現実的な代物で、国や地域、風土・民族個々のセグメントから成り立ったものだという概念から出発しなければなりません。

ソニー創業者で、真のマーケティングの実践・成功者でもあった盛田氏が残された言葉に「Glocal」という造語がありましたが、当にグローバルという語に隠されたローカルという語の重要性を喚起させてくれたものでした。

近江商人の名言「地商い」も、グローバル時代の事業戦略を言い得て妙と言える次第です。未来の成長企業は、真のマーケティング担当役員が社長になるような会社であろうかと思量致します。
 
現在の日本には、千年企業が7社、二百年企業が3146社、百年企業が21700弱もあって、いずれもダントツで世界一だそうですし、有望な新興起業も続々で、例えば繊維産業でも、小は、世界一細くて長いモヘヤ糸や絹糸工場から、大は、最先端の超ハイテク合繊に至るまで網羅している他、超薄もの和紙や金箔、塗り、染め、織り、彫り、編み、焼き、研ぎ、磨き、切れ味鋭い刃物等の伝統的職人による細工・匠の技と、一方で量産・加工技術や伝統且つ最先端の電子部品、インフラ・重工業、精密・工作・医療等の機器、環境産業他、書き切れないほど可能性を秘めた事業が綺羅星のごとく無数に存在しており大いに期待されます。

話題のアベノミクスが、最近版の英エコノミスト誌で「3本の矢というよりも、千本の太い針だ」と絶賛されていますが、肝心なのは、日本経済を動かすのは政治ではなく、飽く迄も民間であり、事業戦略の根幹は川上(生産者やサービス提供者)ではなく、川下(地場地場の消費者)志向のマーケティングにあることを自覚することです。
 
ソフトパワーのもう一つのエンジンは、文化力です。それも、昨今外国人から“クールジャパン”と持て囃されるアニメ・ゲーム・キャラクター等のコンテンツだけではなく、飛鳥時代以来の伝統文化全般の地球的広がりを指向しなくてはなりません。

世界最古の庶民文学(万葉集)や女流文学(源氏物語・枕草子)、印象派を先導した版画、日本画、屏風絵、洋食器を多彩化した有田焼、和食、和菓子、その他匠の技(染織、漆器、蒔絵、金木竹ガラス細工、からくり人形(最新ロボットの祖)から茶華道、能・狂言・歌舞伎・人形浄瑠璃などに至るまで、小職の体験から海外諸国のビジネス仲間からも“日本の伝統文化”が多大な賞賛を浴びる多様性を保持してきたのが日本文化です。

目下、観光業とか地方創生とか、外国人をもターゲットにしようと政官民が必死となっていますが、そうした効果を挙げる近道は、世界の各都市に「日本文化センター」を多数設営することだと提言します。フランスや米国がその成功例でしょう。
 
ハードパワーの軍事戦闘力がそれほど無くても、安保同盟や集団的自衛権を含めた総合的ソフトパワーの外交力を発揮することで国防も国益も叶えることは、平和日本が世界のリーダーになる一つの知恵ではないでしょうか。

その為には、先ず経済界が至当なるマーケティングに拠りパワーアップし、そのスポンサーシップによって文化力を高める“双発のエンジン”をフル回転させることで、国連外交を初めとする国益を高揚する広報をバックアップできるのです。

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最終更新日 2021年10月18日

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