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第二十話:「食糧危機を考える」

2014年6月22日

地球人口の爆発を待つまでもなく、ある意味では既に食糧危機が始まったともいえるし、
少なくとも人類として食糧問題を真剣に考え、食糧危機を未然に防ぐ手を逸早く打っておく必要があると考えます。
ご存知のように、BRICS諸国経済の成長鈍化と資源開発の激化は、世界の日用雑貨品やコモディティ産品の供給過剰、先安観を齎しております。
鉄鉱石や銅は、産元で一時の三分の二迄値を下げ、原油先物価格も現価の八掛けまで安くなっております。
そんな中で、唯一食糧だけが先高感を漂い始めているのです。
この裏に、世界人口の四割も占める人口大国、中国とインドがあることは自明の理でしょう。なかでも、
一昔前までは三大穀物を中心に有力な食糧輸出国だった中国が、ここへ来て国内需要を賄えなくなったのか、
大量の大豆やトウモロコシ、そして小麦や米までも輸入し始めているのです。
おそらく食糧需給ひっ迫を見越した習政権による食糧戦略の転換があったと見て良さそうです。
 
中国の農業政策と言えば、毛沢東時代の大飢饉を招いた失政や、高度成長時代の農業増産成果など、
振幅の大きなブレが想起されます。
噂の域を出ませんが、毛沢東政権による「コメや麦を食い荒らす雀など小鳥を徹底的に退治せよ」との
号令を真っ当に受けて実行したところ、天敵がいなくなったイナゴをはじめとする無数の害虫が急増し、
逆に米麦を食いチラシ、穀類の大凶作を生んでしまったと耳にしたことがあります。
今般の問題点とされるのは、改革開放戦略の両刃の剣とも言われる通り、農地の商工業地や
住宅地への転換による耕作地減少と工業用水、生活用水の優先と、森林破壊等による
河川の干上がり等による灌漑用水の極端な不足による減産だろうかと思われます。
併せて、都市人口増加、食生活の高度化など需要増も輸入を必要としているでしょう。
こうした背景もあって、中國による先進国の食産事業の買い占め、すなわち米国の豚肉加工大手企業、
スペインの大手食肉加工業社やオランダ系多国籍食糧商社をはじめ、フランスのワイン業者、
オーストラリアの酪農業者など、矢継ぎ早の買収旋風を世界中で展開しているのは注目に値します。
 
それ以上に注視すべきなのは、中国政府の後押しもあるのかなと思われる世界各地における
農地や水資源確保のための山林川泉などの買収の動きです。
我が国の東北・北海道のブナ林や原野の数か所がすでに買われてしまったように、
またアフリカやオーストラリアなどでは次々と農地を買い漁っているようです。狙いは海外での
農場経営を通じたビジネス展開なのか、自国の食糧や水源の確保なのかは不明ながら、
その積極的な動きに対して、受入国サイドから次第に警戒意識が高まりつつあるようです。
こうした延長線上に想定されるのは、農産物の集荷、貯蔵、貿易など商物流や金融への指向で
あろうかと推察されます。
もっとも、こうした流通管理分野への影響力と言えば、日本の総合商社が一歩リードしているようで、
三井・三菱・丸紅・伊藤忠などは、近い将来、日本の救世主となりそうな雲行きですし
、後発で焦りまくる中国にはこの分野でのノウハウ蓄積もないので、なんとか
世界の食糧安定調達ネットワークを荒らされない様に、日本の財界は勿論のこと
、政官界の自覚と思い切りの良い戦略拡充に期待する次第です。
 
もう一方で軽視できない、より重大な危機も極めて多く、将来に課題を残しつつあります。
まず先進国における農産物品種改良の行き過ぎによる栄養価減損、ないしは人体有害疑義の問題や
種の保存に関する問題(タネの自然採取が不可となり、種苗業者が独占される)をはじめ、
新興国・後進国における農薬汚染、土壌、河川、水質汚染が発する有害食品問題などが続発して居ります。
併せて気象異変などに伴う凶作や耕作地の干害・水害なども食糧危機を呼ぶ問題点であると思われます。
かてて加えて、動物愛護運動の行き過ぎとも思われる狩猟・漁労制限とか、
今般のニホンウナギ絶滅種指定など、公私取乱れた国際的政治外交文化問題にも
、多くの議論の余地を残しています。
特に留意すべきは、クジラをはじめ魚獲制限の反動から、過剰な養殖・家畜依存に走ることで、
すでに始まっている難題として、穀物等飼料不足の危機(物量的に
人間向けか家畜向かの競合を来たし、一方で成長ホルモン投与など、
人体への危害)が加速されつつあると言う事実でしょう。
 
我が国の漁業凋落ぶり(ピーク時年産1300万トンが近時450万トンと激減)に反比例して、
アジアや北欧諸国の漁獲高、魚介消費量の急増も気になります。
この背景には、消費者の意識と社会構造問題、水産行政など複雑な原因が潜んでいるようです。
美味しいものを安く食べたい要求の裏に、国産天然品の枯渇と出自不詳の安価な代用食品輸入による
偽装問題があり、切り身をパックで売り、弁当やレストランで調理済みとなれば、マグロとヨコワ、
アナゴとウミヘビ、芝エビとブラックタイガー、ウナギとピカーラなどの区別も儘ならなくなってしまうのでしょう。
調理しやすく安価を指向する消費者性向と言えば、魚介から肉食や加工食品への転向も、
水産業後退の大きな要因と考えられます。我が国行政の問題も改革の余地が大きいでしょう。
網元制を排し漁業権を細分化した協同組合制度が、若者の漁業離れを生み、
経営力を失って補助金に頼る高齢漁業者のみを残してしまったのです。
北欧などの水産業近代化改革が産業としての自立と活性化、実力ある経営者を生み、
適正な漁獲量と養殖業を活性化し、流通合理化を進めた結果、収益力を高めて、
今や環境対策まで万全を期しているそうですから、これに倣って日本としても抜本的改革を急ぐべきです。
 
日本の南極海での調査捕鯨を違法と判決を下した国際司法裁判所の判事構成が、反捕鯨国出身10人、
捕鯨支持国4人だったことは、如何とも解せないし、ノルウエィ他の商業捕鯨には御咎めなしと言うのも
納得が行きません。
反対主導国であるオーストラリアでは、野生カンガルーを何と2百万頭/年も駆除して肉用等に
産業利用しておきながら、日本が捕獲した黒ミンククジラはわずか250頭(生息数60万頭中の)にも拘らず、
裁いた事は良識を越えた感情問題としか思えません。ミンククジラが増えすぎ、餌の取り合いから
シロナガスクジラが2千頭に激減したほか、マグロなどの漁獲量急減は人類にとっても大問題であり、
日本としても産業界・学界と政治外交が一致団結して、尚一層の国際的発信と強気の折衝が急がれる
問題ではないでしょうか。
 
産業革命前の諸国では、総人口の八割が農漁民として食糧生産に従事し、
残り2割も含めた人々を養ってきましたが、現代の先進国社会では、
理論的にはわずか2%弱の人々が食糧生産に従事すれば、残り98%の人々を
食わせることも可能だと言われています。
問題は、一次産業以外の生産・商業活動からあぶれ、所得がなければ、
食料が店頭にあぶれていても買えない、食えない、すなわち豊穣の中の飢餓が避けられないと言う
構図に行き当たってしまうことです。
それと、国際間の格差是正の問題、すなわち人口の過不足と農漁業に関する政治行政の
善悪に伴う食糧生産能力の過不足のバランスをいかに埋め合わせできるか、
当に人類の知恵が問われている訳です。
日本においても、先に挙げた漁協に匹敵する農協が農業活性化の阻害要因となっており、
250万人もの零細・兼業コメ農家の減反政策(奨励金)や個別保障など税金の無駄使いに
終わっているのは喫緊の課題です。国際競争力とか合理化の面で参考になるのは、酪農家でしょうか。
此処数十年で40万戸が2万戸に激減する一方で、生乳生産が2百万トンから850万トンに激増し、
明らかに規模のメリットが生かされたのです。
急ぐべきは、10戸~20戸の農家を一戸に集約して(全国に15万戸程度)農家の規模拡大と
減反廃止・遊休地活用・穀類や野菜・果実の多様化、量産化、高付加価値化を計れば、
農家の自立と経営力が増し、所得増が得られ、消費者にも(国内のみならず海外にも)喜ばれるし、
一石三鳥効果が期待できそうです。
農産物の商物流や加工等を考慮するなら、そして大型資本投下や設備投資を進めるため
、二次三次産業の新規参入とか農家との連携を許すような規制緩和施策も望まれます。
 
食糧危機は、間もなく、そして確実に、この地球上へ押し寄せて来そうです。しかも世界が
取り組むべき課題である以上、日本人としても更なる危機意識を高め、
問題解決能力を磨いておく必要があると信じます。
農業水産行政の迅速な改革にはTPP加盟によるショック療法も効果大と考えられますし、
政治外交上、官民問わずやるべきこと、言うべきことも多数あります。それにもまして重要なのは、
人類の生存と健康維持の為にも、一消費者としての我々個々人の自覚と、食に対する良識の涵養であると
思量致します。

最終更新日 2021年10月13日

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