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第百二十四話:「夏の大通りは歩行者天国」

2021年7月30日

「盛夏路上の図」という江戸時代の絵を見ました。そこに描かれているのは、
日本橋あたりの大通りの歩行者天国のノリで、何やら商売をしている者と、
楽し気な庶民の姿に興味を惹かれます。この道は活気にあふれ、皆のものと言った感じです。露天商と見受けられたのが、「水菓子」の看板を出しているが、
そこに並んでいるのは西瓜で、切り売りをしているようですから、
当時は果物を水菓子と呼称したようです。
 
西瓜くふ奴の髭の流れけり      宝井其角
こけざまにほうと抱ゆる西瓜かな   向井去来
 
旅姿の一行は、富士講のスタイルの白装束で傘を被ったり、背に掛けたりしています。
利根川と書かれた下に「鯉」の字が見える看板が見えますので、おそらく、
「鯉の洗い」を酒の肴に出す小料理屋でしょうか。新鮮な鯉の身を薄く削ぎ、
冷水で洗って肉をちぢめ引き締めたものを、酢味噌で味わう淡白な夏の料理です。
 
衣装もやみな白妙の富士詣      伊藤信徳
利根の風まともに吹けり鯉あらひ   金子星零子
 
「天麩羅」の文字が見える屋台があり、客が座っており、真夏にも揚げたての
天ぷらが庶民に好まれたようです。
他にも、天狗の面を頭に乗せた羽織袴姿の大道芸人のような神道者が
お札のようなものを子供にばらまいているとか、黒い装束で天秤棒を担いでいるのは
薬箱のようですから、おそらく越中富山の薬売りの二人組でしょうか。
中でも、一番面白くて、注目したのが、裸にふんどし、鉢巻き姿の男が担いでいる
水桶の底の穴から路上に水まきをして歩き回っているユニークなシーンです。
アスファルトも、コンクリートも、石畳もなかった江戸の街の大通りは、
人通りも多く、土ぼこりもすごかったと想像できますし、通りの大店主や
露天商にとっては、とても貴重な重労働を引き受けてくれる「打ち水屋」さんは、
とても有り難い存在だったので、おそらくたっぷりと謝礼金をはずんだと思われます。
 
打ち水に残る涼みや梅の中      内藤丈草
打ち水や挑灯しらむ朝参り      小林一茶
打ち水をよろめきよけて病犬     高浜虚子
 
炎暑の夜は蚊のわずらわしさを逃れ、安眠を売る為の古来唯一の防具は蚊帳でした。
 
いねながら蚊帳の月光掌にすくふ   山口誓子

最終更新日 2021年11月6日

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