エボラ出血熱の2次感染者発生に米国民はパニック状態
2014年10月17日
- 2015年ノーベル賞:屠呦呦(Tu youyou)博士の発見したマラリア特効薬アルテミシニン 1.エボラ出血熱の2次感染者発生に米国民がパニック状態
- 2.国民の不安解消にCDCが発表した「エボラ出血熱は恐るるに足らず?」
- 3.西アフリカで急速に蔓延するエボラ出血熱の現状
- 4.二次感染したニーナ・ファンさんはどんな人?
- 5.非難が集中したダラスの長老派病院
- 6.経済的ダメージを受けたエボラ患者受け入れ病院
- 7.ニーナ・ファンさんの愛犬はどうなったか
- 8.二人目の感染者の航空機搭乗が判明しパニック
- 9.アトランタのエモリー大学病院(Emory University hospital)
- 10.ネブラスカ大学医療センター(Univercity of Nebraska Medical Center)
- 11.CDCが改良した強毒ウィルス防護服
2015年ノーベル賞:屠呦呦(Tu youyou)博士の発見したマラリア特効薬アルテミシニン
1.エボラ出血熱の2次感染者発生に米国民がパニック状態
エボラ出血熱の2次感染が現実となった米国ではその対応を巡ってヒステリックというかパニックというか冷静さを欠いた議論が
始まっています。
「防疫対策に不備があるのでは?」
「これまで何人かの感染者を治療した2か所の病院では2次感染が無かった」
「なぜ経験の浅いダラスの長老派病院にエボラ感染者を収容したのか」
「全米でも対応できる病院は4ヶ所しかないはず」
「なぜ2次感染した看護師を一般航空機に乗せたのか」
「病院関係者は一般人と接触すべきでない」などなど。
世界保健機構(WHO)を代表して感染症対策を常にリードしてきた
米国政府機関のCDC (Centers for Disease Control)。
その対応が非難、批判される状態では、全面的に世界保健機構に
頼っている日本など諸外国はより不安が募ります。
非難の主対象はリベリアから帰国した感染患者の診断ミスをした上に
2次感染看護師を二人も出したダラスの病院と、対応の相談に乗っていたCDC。
1次感染者や2次感染者を禁足しないで多くの人に接触させていますから
接触した人ばかりでなく近隣もパニック状態。
連日メディアが関係者の責任の擦り合いなどを報道しています。
ジーマップは免疫不全など副作用の懸念される未承認新薬ですが、
富山化学(富士フィルム)の新薬が信頼されていない現状では
ジーマップが唯一の治療薬。そのジーマップさえ十分に供給されない
現状では関係者が不安なのは当然でしょう。
パンデミックの前にワクチンや治療用の新薬開発が間に合うことを
祈るばかりです。
治療薬ジーマップについては下記を参照してください。
2.国民の不安解消にCDCが発表した「エボラ出血熱は恐るるに足らず?」
*エボラは感染が疑われる人でも、発症の兆候の無い人からはうつらない*空気感染はしない
*水や食品(米国に限る)からは感染しない
*エボラが感染するのはすでに兆候がある患者の体液、
*ウィルスに汚染された物、ウィルスに感染している動物などに
触れた時のみ。
*例え上記に巻き込まれても21日間何事もなければ発症しない。
3.西アフリカで急速に蔓延するエボラ出血熱の現状
すでにシェーラレオネ(Sierra Leone), リベリア(Liberia)、ギアナ(Guinea)では8月に約1,000人だった死亡者が、今週現在で
4,000人以上となり、感染者が毎週のように前週の倍増となるネズミ算的増加。
WHOの発表ではこの3国だけで今年末にも1週間に10,000人の
新感染者が発生(アウトブレーク)する日が近いとのこと。
新たな防疫手段が開発できなければ新年には100万人を超える感染者に
なるだろうと予想されています。
貿易関係でたくさんの日本人が関与するコートジボワール、ナイジェリアに飛び火したら
対岸の火事ではすまなくなります。
WHOの対策機能を代行する立場の米国ではオバマ大統領が
世界のために「全力を尽くしてエボラに立ち向かう」ことを約束。
2015年5月時点
ギニア、リベリア、シェラレオネ、周辺国(ごくわずか)の合計は死者1万1千人強。
患者数は2万7千人弱。
4.二次感染したニーナ・ファンさんはどんな人?
病院が正式な公表をすることは禁じられていますがマスコミは様々なルートで個人情報を探っています。
米国でリベリア帰りの感染者ダンカンさん(Thomas Eric Duncan)より
2次感染した初めての女性はアジア系のニーナ・ファン(Nina Pham)さん。
フォートワース出身のニーナ・ファンさんは私学のテキサス・キリスト教大学
(Texas Christian University:1873年創立 )
看護と健康科学のハリス学部(Harris College of Nursing & Health Sciences)
を卒業し、2010年に看護師となったばかりのキュートな美人の26歳。
民族的ルーツは不明ですが名前からはベトナム系。
パム、ファムと発音する人もいるようです。
米国ではこのようなことを掘り下げるのはハラスメントと取られかねません。

Phrynosoma cornutum pictured by TCU
CDCのフリーデン所長(Tom Frieden)が「防護服を着ていたファンさんが
感染したのは経験が浅くマニュアル通りの手順で看護をしなかったのでは」と
発言し抗議が殺到。
危険な行為があったとしても、熱心なカトリック信者ファンさんの宗教心あふれる
親切心からというのが周辺の認識。
良い噂のない黒人のダンカンさんに他の看護師より全力で
接しただろうことは想像に難くありません。
いまではファンさんの回復を祈る祈祷会が連日開催される人気者。
ジーマップ投与で生き延びたブラントリー医師(Dr Kent Brantly)の
抗体を持った血液で静脈(intravenous :IV)輸血治療(blood transufusion)を
受け、良好な状態とのことです。
ブラントリー医師は西アフリカで感染した米国人最初の感染者で
伝道師でもあります。
5.非難が集中したダラスの長老派病院
ニーナ・ファンさんが勤務していたのはダラスの長老派病院(Texas Health Presbyterian Hosupital Dallas)。
長老派教会(スコットランド発祥のプロテスタント・キリスト教)の
伝道師がダラス住民など5,000人の寄付460万ドルにより
1966年に設立した898ベッドを持つ大規模総合病院。
歴史は浅いのですが最新機器を備えた手術室、検査室を持ち
消化器疾患、神経外科、整形外科や難病治療に定評があります。
特に全米看護師協会(American Nurses Association :ANA) 傘下の
看護師資格認定センター(the American Nurses Credentialing Center)
より米国一とも評価された看護サービスが有名な病院。
しかしながら西アフリカでエボラに感染し死亡したダンカン氏を誤診。
脳炎系のウィルス性感染症やノロウィルスと症状が似ていますから
誤診しやすいのは事実。
病院はダンカンさんを隔離せずに帰宅させたり、発症後に多くの人に接触させたこと。
看護師の女性二人を2次感染させ、一人は定期路線の航空機に乗せたことなど、
度重なる失態で強い非難を浴び、その能力に疑問を持たれるようになっています。
6.経済的ダメージを受けたエボラ患者受け入れ病院
当初西アフリカで感染した欧米人はスペイン人神父、米国の医師と助手の3人。いずれも西アフリカで布教活動をしていました。
エボラ出血熱に感染後、それぞれスペインと米国に帰国しましたが、致死率の高い
感染症の患者。
入院先の病院では直ちに入院者、通院者のキャンセルが続出し
敬遠されるようになりました。
特に米国では二人の後にダンカンさんが入院したダラス長老派教会、
スペインは神父が入院したマドリッド・カルロス病院(Carlos III de Madrid)。
特にスペイン人神父は早期段階に限り有効といわれるジーマップ
治療薬の到着が遅かったために、結局は死亡。
マドリッド・カルロス病院のキャンセルによる経済的被害は甚大です。
7.ニーナ・ファンさんの愛犬はどうなったか
ファンさんの愛犬ベントレイ(Bentley)はキャバリエ―・キングチャールス・スパニエル
(Cavalier King Charles spaniel).
エボラに感染して帰国したスペイン人看護師の愛犬が
処分されただけに、米国人動物愛護者のベントレイへの関心が
一気に高まりました。
関係者がフォートワースの放送局(WFAA)に話したところによれば
ベントレイは未公開場所に隔離されているが処分はされていないとのことです。
8.二人目の感染者の航空機搭乗が判明しパニック
CDCが15日水曜日に二人目の2次感染者であるヴィンソンさん(Amber Joy Vinson:29才)が発症1日前の13日に
クリーブランドからダラス行きの航空機(Frontier Airlines flight 1143)に
搭乗していたことを発表。
ヴィンソンさんはニーナ・ファンさん同様にダラスの
長老派病院でエリック・ダンカンさんを看病したアフリカ系の看護師。
この報道で132人の同乗者をはじめ、関係者より非難が長老派病院とCDCに殺到、
一気に全米を揺るがすこととなりました。
現在は商業航空便には病院関係者を乗せていないとCDCのフリーデン所長が
会見で公言しましたが手遅れ。
9.アトランタのエモリー大学病院(Emory University hospital)

ヴィンソンさんは現在アトランタのエモリー大学病院(Emory University hospital)に入院中。
エモリ―大学病院はメソジスト派ビショップ(Bishop)のジョーン・エモリ-師(John Emory)が1902年創立。
1922年にコカコーラ創立者のカンドラ―氏(Asa G. Candler)の寄付により275ベッドの病院となりました。
小規模ながら全米で有数のハイレベルな病院といわれ、毎年320件を超える体組織移植手術で著名。
エボラ出血熱に関してはオマハのネブラスカ医療センター(Nebraska Medical Center in Omaha)と並び、
強毒性ウィルスに対応できる隔離施設(Infectious Disease Unit)と知識を持つ病院といわれています。
すでに、エモリ―大学病院には8月に西アフリカから順次帰国した若い男女二人、
フォートワースの看護師ファンさんが抗体保持血清を使用したブラントレイ医師(Dr.Kent Brantley)と
ナンシ-・ライトボル助手(Nancy Writebol)が収容され、ジーマップ治療、輸血治療などにより回復しています。
発症後の患者は特殊設備をもったガルフストリームジェットで搬送されたそうです。
10.ネブラスカ大学医療センター(Univercity of Nebraska Medical Center)
ネブラスカ大学医療センターはオマハに1902年創立されたネブラスカ大学附属病院。近年、近くの大病院を併合しNebraska Medicinと名乗るようになりました。
全米最大級の強毒性のウィルス感染者隔離施設を設備しています。

医療センターは2014年9月4日にリベリアでエボラ出血熱に感染した
ボストン生まれのリック・サクラ医師(Rick Sacra:51才)を入院させたことを発表。
サクラ医師はリベリアで入院後、旅に耐える体力があったために一般の航空機で自力帰国。
サクラ医師はアフリカで、後にエモリ―大学病院に入院した二人の医療支援機関仲間、
ケント・ブラントレイ医師とナンシ-・ライトボル助手両氏を診ていました。
サクラ医師の経過は順調といわれますが詳細は不明。
米国では患者の情報を公開することは法で禁じられています。
11.CDCが改良した強毒ウィルス防護服
CDCは米国最初のエボラ2次感染者ナンシー・ファンさんが防護服を着用しながらもウィルスに感染したのは彼女のミスが重なったのではないかと言いつつも
その後、防護服の非をも認めて改良。着脱手順なども改めました。
CDCがメディアで公開した新たな改良防護服(左が旧.右が改良後).

最終更新日 2021年8月7日