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株価が急騰したエボラ出血熱ワクチン開発企業: キー(鍵)はNIHのサリバン博士

2014年10月25日

10月23日のニューヨークタイムスはギニアより帰国した
クレイグ・スペンサー医師がエボラ出血熱に感染しベルビュー中央病院
(Bellevue Hospital Center) に隔離中と伝えました。
大都会ニューヨークは大騒ぎ。
「国境なき医師団」に加盟しての活動は評価できますが、
21日間といわれる潜伏の可能性がある期間は人の集まるところ、
地下鉄など公共交通機関は避けるのが常識。
若い(33歳)からでしょうが医師としての見識を疑われます。
こんなこともあり、エボラ・ワクチン開発ベンチャーの株価が急騰。


1.エボラ出血熱(ebola hemorrhagic fever)流行の始まり

エボラ出血熱の最初の流行(epidemic)は
1976年頃に推定人口3,800万人のスーダン(Sudan)と推定人口約6,700万人の
ザイール(Zaire:現コンゴ共和国:Democratic Republic of Congo)で記録されています。
エボラの名前はスーダンのエボラ河由来。
その後1995年の流行時にはスーダンで300人以上が死亡しましたが、
以来途絶えていたそうです。
エボラ出血熱は1976年に流行してから今回の大流行(outbreak)までの
35年間で確認されている死者が1,600人くらい。
人口の割に感染者が少なく、感染症としてはごくマイナーでした。
それが、今回2013年からのブレイクでは人口総計が1,500万人に満たない
3つの国が1年足らずの短期間で合計感染者1,800人弱。
その後ネズミ算的に増加し、2014年10月第3週には死者はすでに4,800人を超え、
致死率が6割強。感染者は1万人を超えているでしょう。
10月末には死亡者が5,000人を超えることが予想されています。
データはHIH(National Institutes of Health)
*2014年11月23日News
感染者総計約1万6千人.死者5,700人.
*2015年4月日News:
ギニア、リベリア、シェラレオネ、周辺国(ごくわずか)の合計死者1万1千人強。
患者数総計2万7千人弱。


2.エボラの特徴とワクチン

エボラ・ウィルスに特徴的なのはヒト細胞に侵入するというより、
包み込んでしまうこと(enveloped)。
エボラ・ウィルスにはヒト細胞に侵入したウィルスに感応する一般的な
免疫システムとは異なる免疫システムを機能させるワクチンが要求されます。

現在のエボラ対策はジーマップなどいくつかのドラッグ(治療薬)が試用されていますが
承認薬は他用途医薬品の応用。
専用医薬品は未承認薬のために量産はされておらず、感染拡大に対応しきれていません。
これまで試用されている未承認ドラッグは副作用の懸念が強く、安全性に
確信を持てるまで長い時間が必要でしょう。
ウィルスを予防する医薬品の機能は大部分が細胞機能のある部分を制御すること。
そのような医薬品はピンポイントで効果を得ることが難しく、正常な細胞機能まで
制御してしまう恐れがあります。
したがって10月24日のニューヨークタイムスはドラッグ(治療薬)よりワクチン開発と
その高度な治験を急ぐよう指示を出したことを伝えています。

 


3.ワクチン開発のカギはサリバン博士(Nancy J. Sullivan)

エボラ出血熱(ebola hemorrhagic fever)はCDCにより
バイオテロリズム・カテゴリーA(Category A bioterrorism agent)
に指定されている強毒ウィルス。
しかしながらザイールのブレイク以来、宿主と推定されている
蝙蝠(こうもり:フルーツ・バット)に背負わせて潜んでしまったのか
1997年には話題になることが稀になりました。
それに目を付けたのが、人のやらないことをやりたかったナンシー・サリバン博士。
*NIHワクチン研究センター*の上級研究員で細胞学専門(cell biologist)。
研究を始めて数年後には(サルでの実験段階ですが)エボラ出血熱に
有効な世界初のワクチンを開発しました。
*National Institutes of Health’s Vaccine Research Center

エボラ・ウィルスはこれまでにチンパンジーやゴリラなど希少動物を
数千頭も殺害してきましたから、博士の開発は保護地域や動物園などには朗報でした。
この研究は、これからスピードアップされるだろうヒト感染に対する
ワクチン実用化の中心的な存在となると予想されています。
サリバン博士と共同開発しているグラクソスミスクライン(GlaxoSmithKline PLC)によれば
ワクチンは来年はじめには百万人分を準備できるとのこと。
*2014年11月26日News
NIHが発表したところによればこれまでメリーランド州で進めてきた20人規模の治験で、
いずれのケースも安全性と抗体の形成を確認。
2015年初から感染地で数千人規模の治験に入るそうです。

 


4.ワクチンと治療薬の開発レース勝者はChAd 3とVSV-EBOVか

*NIH*によればワクチンの候補はいくつもありますが、2015年初めからは治験が本格化し
近々に5年、10年の安全性確認スケジュールが出来上がる予定とのこと。
ワクチンビジネスは利が薄いために大手の製薬会社は手を出したがりません。
現在最も評価が高く実現性があるのはWHOに公式治験を指名された
ニューリンク・ジェネティクス(NewLink Genetics Corp)の
VSV-EBOV(ワクチン)と、サリバン博士の*国立衛生研究所(NIH)と共に
グラクソスミスクラインが共同開発している*ChAd 3(ワクチン)*の二つ。
*National Institutes of Health(NIH)
*Chimpanzee-Adenovirus(チンパンジー・アデノウィルス)

治療薬は下記3未承認医薬品が注目されています。
治療薬は効能が最重要ですが、価格と供給力が重要選考要素。
特に貧困なアフリカ向けとなると難しい選択となります。
ZMapp
TKM-Ebola
AVI-7537

富士フィルムのアビガン錠はスペインで2次感染した看護師に使用されましたが
その他の実績ある未承認薬や抗体療法が同時に使用されており、
アビガンが効果あったという専門家の評価はまだありません。
*2015年4月News:
東京大学の河岡義裕教授らと米国立衛生研究所(NIH)、米ウィスコンシン大学の新型ワクチンが
新たな関心を集めています.
エボラウイルスの遺伝子操作で増殖能力を不可能にし、過酸化水素水で毒性を排除しているという.

 


5.ニューリンク・ジェネティクス(NewLink Genetics)のVSV-EBOV(ワクチン)

ニューリンク・ジェネティクス社はガン免疫療法のリーディングカンパニー。
1999年にチャールス・リンク博士(Dr Charles Link) と
ニック・ヴァ(ハ)ニアン博士(Dr Nick Vahanian)によって創業された
アイオワ州をベースとするベンチャー。
カナダ公衆衛生局(the Public Health Agency of Canada).より
*VSV-EBOV*を譲り受けました。
カナダ政府は8月に1,000人分以上のVSV-EBOVを西アフリカに寄贈。
治験が進んでいるそうです。
*VSV-ZEBOVと呼ばれることもあります。ザイール(Zaire)型エボラという意味。
同じ8月にニューリンク・ジェネティクスは
子会社のバイオ・プロテクション・システム(BioProtection Systems Corporate)が
*国防省脅威減少局*よりエボラワクチン開発費として100万ドルを授受したと発表。
ワクチン開発唯一の有望ベンチャーとして最近4週間で
株価は35%の急騰(NASDAQ::NLNK)をしました。
*United States Defense Threat Reduction Agency (DTRA)
*2014年11月27日News:ニューリンク・ジェネティクスは米国メルク社にVSV-EBOVの
 開発、販売の権利を譲渡。約5,000万ドルといわれます。

 


6.グラクソスミスクライン(GlaxoSmithKline)社のChAd 3(ワクチン)

米国のCDCはグラクソスミスクライン(GlaxoSmithKline)社が
中心となっているチームに、ナイジェリアの健康な人を対象に
ChAd 3(Chimpanzee-Adenovirus)のフェーズ1治験を要求しているようです。
このチームにはスイス・イタリア系のバイオテック・ベンチャー、
オカイロス社(Okairos:グラクソと合併)とクリューセル(Crucell)社が
開発に加わっています。

Crucell 社とは
クリューセル(Crucell)は1993年にライデン(オランダ)で創業されベンチャー
2011年にジョンソン&ジョンソン(Johnson & Johnson )と合併。
そのバイオビジネスの中心的な役割を担っています。
エボラ・ワクチンに関しては
多用途フィロウィルス・ワクチン(multivalent filovirus vaccine)を
*NIAID*と共同開発を始め、2006年には小規模な治験を実施したそうです。
*US National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)

 


7.マップ社.とリーフバイオ社のジーマップ(ZMapp)(治療薬)

西アフリカで感染した3人の欧米人に試験的に投与されたのは
サンディエゴ(カリフォルニア)のベンチャー企業
マップ社(Mapp Biopharmaceutical,Inc)と
リーフバイオ社(LeafBio)が開発中のジーマップ(ZMapp)。
2003年に設立したばかりのマップ社を率いるのは
ジョーンズ・ホプキンス大学卒のラリー・ツアイリン博士(Larry Zeitlin, PhD)。
エイズなど特殊な感染症治療薬開発に定評があり、
ジーマップ(ZMapp)開発に中心的な役割をはたしています。
抗体療法に使用されたのはマップ社のMB–003と、コラボレーションしている
デフィルス社(Defyrus Inc.:トロント)のZMAb
この二つをベースにニコチンなど3種類の植物成分をカクテルして作られた
モノクローナル抗体がジーマップ(ZMapp)。
ニコチンの原型はオーストラリア産のタバコ品種からといわれ、モンサント系の
遺伝子組み換え技術で栽培するとしています。
実績はありますが供給量が極端に少ない
使用機会の少ないコスト高のオーファンドラッグでもあり、
現段階では量産体制にありませんが、ケンタッキー州の関係工場で
生産すれば、2か月後くらいには必要量供給を開始できるといわれています。
(この項は他稿にも掲載されています)

 


8.テクミラ・ファーマソーティカルのTKM-Ebola (治療薬)

テクミラ・ファーマソーティカル(Tekmira Pharmaceuticals Corp)は
創業以来14年のバンクーバーを拠点とする非常に若いリポ核酸(RNA) *干渉治療*専門会社。
リポ核酸研究に関して定評があります。
*interference (RNAi) therapeutics 。
テクミラの開発したTKM-Ebola は4年前に防衛省から1億4千万ドルの開発資金.を
与えられました。
上場している数少ないエボラ関連株として株価が
一株約23%急騰(TSE:TKM) (NASDAQ:TKMR)しました.

 

9.チャイメリックス(Chimerix)のbrincidofovir(治療薬)

チャイメリックスが開発したブリンシドフォヴィル(brincidofovir)は
治療用医薬品のため供給量は多い。。
ヘルペスやアデノウィルスを含めた多様な抗ウィルス剤を開発している
ノースカロライナ州(ダーラム)のベンチャー(Nasdaq:CMRX)
今回のエボラ・ブレイクでは*FDA*から*緊急治験許可*を得ている。
*U.S. Food and Drug Administration (FDA).
*Emergency Investigational New Drug Applications (EIND)

 


10.セレプタ(SAREPTA)社のAVI7537(治療薬)

SAREPTA社はマサチューセッツ州(ケンブリッジ)所在の小さなベンチャー.
AVI 7537は末席ながら注目治療薬の一つとなっています。
下記の強毒ウィルス治療薬開発が特徴的。
AVI 7288 マールブルグ出血熱(Marburg hemorrhagic fever)
AVI 7537 エボラ出血熱(ebola hemorrhagic fever)
AVI 7100 インフルエンザ

 


11.バイオクリスト(BioCryst)社のBCX4430(治療薬)

バイオクリスト(BioCryst) は1986年に
トライアングル・パーク(Triangle Park:ノースカロライナ州)で創業された
ごく小規模なベンチャ―。
癌(ガン)やウィルス対応医薬品の研究開発が主。
出血熱研究を進めるため(hemorrhagic fever viruses、)2013年に約2,000万ドルの
政府系予算を与えられている。
2014年9月にエボラ、マールブルグなど特定の出血熱対策に
BCX4430の開発を急ぐことを要請され、約200万ドルの追加予算がNIHの*NIAID*
より与えられたと発表。
株式市場(BCRX:NASDAQ) の評価は高くない。
*US National Institute of Allergy and Infectious Diseases (NIAID)
*National Institutes of Health(NIH)

 


12.富士フィルムのアビガン(Favipiravir)(治療薬)

ファヴィピラヴィー(Favipiravir)のアビガン(商品名)は富士フィルム傘下となった
富山化学がインフルエンザ予防薬として開発、承認された医薬品。
効能、安全性の評価はまだですがチャイメリックスの
ブリンシドフォヴィル(brincidofovir)とともに供給力があるという
点で候補のひとつになっています。
フランスとギニアが11月ごろに治験を検討しているといわれますが、
現段階では効能期待のトップスリーには入っておらず
供給力と低価格が評価されているのでしょう。
外国の専門家が効能に注目しているかのような誇大情報を流し、
株価操作をしようとするグループに注意する必要があるようです。

 


13.(参考)マーブルグ出血熱(Marburg haemorrhagic fever

マーブルグ出血熱はエボラ出血熱と同じフィロウィルス科(Filoviridae)。
マーブルグ出血熱の症状はインフルエンザ様でエボラと変わりませんが、
特徴的なのは皮膚粘膜発疹といわれます
1967年にウィルスが最初に同定されたのが大学都市のマーブルグ市(ドイツ)。
以来、その名がついていますが、アフリカの風土病といえる人獣共通感染症。
コウモリ、サルなどから感染すると考えられています。
エボラ出血熱と同様に散発的に発生すると考えられていましたが
2005年に西アフリカ南部のアンゴラ共和国(República de Angola)ウィジェ州(Uige)で
ブレイクした事例以来、汚染地のケニア、コンゴ、南アフリカなど関係各国は
警戒を強めています
(この項は他稿にも掲載されています)
 

 

 

最終更新日 2021年8月7日

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