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BCG接種有用説はCOVID-19抑制に間に合うか?

2020年4月18日

人との接触回避8割減が政府のスローガン。
そんなことが出来ない、様々に異なる事情を抱える国民が
官民の歴史ある組織に所属する人より、はるかに多いのが現実。

政府要請では被害者に必要生活費の補てんを考えているようですが、
国民の大部分を占める零細な仕事マンは自分にまで恩恵があるのかどうか、
政策を信用しない人も多数。

「新型コロナウイルスの危険性を否定する人はどう説得すればよいのか?」
「ストレスを多く受けると反抗的な態度を取ってしまう性格の人の扱いは?」
「不安が増大するとパニックになり思考能力が失せる人はどうする?」
いずれも返答に窮する質問。
どこの国でも軍や警察による強制しか術(すべ)がありません。

最も効果のある感染症対策は国の指示どおり、人と会わないこと。
要するにCDCが求めている「感染しない」ことです。
それができなければ、答えは個々の免疫力強化しかないでしょう。
開発を急いでいるCOVID-19ワクチンも主流は人造ウィルス接種により
人間の自然免疫力を奮起させる新たな手法です。

1. COVID-19に無症状感染者や軽症感染者が多いのはBCG接種国?

1か月前くらいから、日本など、いくつかの国に無症状感染者や
軽症感染者が多いことが、結核菌予防の*BCGワクチン接種によるものではないか
と話題が沸騰しています。
* BCG:バチルス・カルメットゲリン(Bacillus Calmette-Guérin)
結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の生菌を薄めて接種するワクチン。
実際には種がごく近い、牛由来のMycobacterium bovis。

その根拠は
①BCGを義務化していない国と義務化している国を比較すると
いくつかの小さな例外を除き義務化国の感染率、死亡率が著しく低い。
BCGを義務化していない国と義務化している国を色分けした地図と、
COVID-19感染者数の多少を国別に色分けした地図を重ね合わせると明快。

②数あるBCG株の中でも古い、伝統的な日本株が特に有用なのでは?
義務化している国でも新しいタイプと伝統的な古いタイプで有用度が異なります。
これは西ドイツ(新タイプ)、東ドイツ(ロシアタイプ)の差で比較できます。
日本株、ロシア/ハンガリー株、ブラジル株が接種されていた国では感染率、
重症化率、死亡率が低いのがわかります。
*日本株は1965年に開発された「Tokyo 172 strain」
 高温多湿な環境に適しているといわれます。
(BCG有用説の根拠はネット上に多くの解説がありますから省略します)
 

2. BCGワクチンの汎用性が発見されたのは1978年

BCGワクチンが多目的な用途に役立つことは1978年にデンマークや
オランダの**研究者がギニア・ビサウ共和国(Guinea-Bissau:西アフリカ)での
ワクチン研究成果として発表しています。
貧困の極致といえる発展途上の小国ビサウで子供たちを感染症から救うべく
現地入りした若い研究者らが、世界の誰でもが恩恵を得られる安価なワクチン作りの
基礎を築いたのです。
高額なリターンを得られる研究に注力する医薬品メーカーがほとんどの時代ですが
最近になり研究者らのビサウでの成果が日の目を浴び、その延長線で新感染症にも、
ごく安価なワクチン開発が期待できる時が来たのかもしれません。
 
BCGワクチンの汎用性は疫学的研究ですが、説得力のある研究で、この研究をベースに
現在の三種(三価)、四種混合ワクチン接種が行われたといわれています。
*当時、発表されたテーマは汎用ワクチンと訳すべきか、不特定目的ワクチンなのか
どちらでも良いと思いますが、研究者らは「non-specific effects of vaccines」
と呼んでいます。
 

3. BCGワクチン接種はCOVID-19抑制に間に合うのか?

WHOも調査研究をしているようで、COVID-19対策には説得力のある有力な学説ですが、
様々な問題点を解決する必要があります。
問題点の解決には1年以上を要すると思われ、進行中の
COVID-19の新ワクチンより早いとは思えないのが残念です。。
ただし基礎を築いた研究者らの主旨を生かし、これからも度々現れる新感染症に
ごく安価なワクチン製造が期待できる研究開発の出発点としたいものです。

 COVID-19感染予防には間に合わないだろう問題点
@BCGのCOVID-19に関する有用性は世界の医学者共通の認識として
確定しているわけではありません。
研究が未熟段階ですから、まずそれを完熟させる必要があります。

@どのBCG株を使用するのか、使用できるか、未明であり選択に時間を要します。
 相当な難関でしょう。

@これまでに成人への接種実績、COVID-19への効果判定報告はほとんどありません。
実績は最高でも12歳くらいまで、近年はほとんどが1歳未満の乳児に接種しています。
安全性を確認し、効果を上げるには、成人への接種量の治験が必要です。
生菌ですから、接種法、接種量によっては予期せぬ事故も考えられます。

@日本ではBCGを国有企業の民営化と同様な経緯で設立された会社一社が
乳児、幼児用に製造しています。
乳児、幼児用の絶対量確保が第一であり、その命題を完遂してからの
大量の成人用製造はすぐには取り掛かれず、そのような準備に会社は消極的です。

@新たにBCGの開発製造に取り組む製薬会社があるかどうか。
ワクチンに弱毒化生菌、不活性化生菌を使用することは、双方ともに、
おそらく過去のものになるだろうからです。

@BCGの免疫力による無症状感染者が大量発生したら?
保ウィルス感染者が野鳥、コウモリ、豚など動物と同様の宿主状態となり、
人間を含めた他の哺乳類に感染させる可能性は? あり得ます。
答えは1世紀くらい後でしょう。
 

4. 近年のワクチン開発は人造ウィルスによる免疫力強化が主流

昨今の新ワクチン開発はウィルスの遺伝子を解析し、その設計図で作られた
人造ウィルスを使用することが主流となりそうです。
話題のCOVID-19のワクチンは70カ所を超える研究所が開発中ですが
大半は人造ウィルスを使用しています。
人造ウィルスを人体に投入して抗体を作らせ、それに実際の病原ウィルスを撃退させる
作用機序です。言い換えれば免疫力強化策の一つです
生物の遺伝子解析が進化し、結実した証ともいえますが、だれもが認める当然の
成り行きでしょう。
医薬品製造会社が過去の手法となりそうな製法でのBCG製造を嫌うのは
自然でしょうが、新たな製法ですから、安全性の確認に時間を要します。
 

5. ギニア・ビサウ共和国で感染症ワクチンを研究した二人

1978年のギニア・ビサウでの研究(Bandim Health Project)をリードしたのは
コペンハーゲン大学(デンマーク)の*Peter Aaby 博士と
*Christine Stabell Benn博士(女性)
共にその後の1991年に汎用ワクチン「non-specific effects of vaccines」の
セオリーを確立しています。
WHOも1978年の報告に「BCGワクチンは乳児や幼児を病魔から総合的に護り、
生存率を高める」と疫学的成果を認めていました。
ただし当時のBCGワクチンは効能が最大でも60%くらいだったそうで、
この研究報告も裏付け検証に乏しいと、WHOの評価は低く、BCGワクチンの汎用性を
公式に認めるまでには至らず、数十年間はそれ以上の話題となりませんでした。
「overall mortality in children, but rated confidence in the findings as “very low.”」

今世紀になり、裏付けが進むと、WHOはこの研究のコストパフォーマンスの良さを重視。
発展途上国の子供たちを多くの*感染症から護るプランの再編成に、
その可能性を検証しているといわれます。
この頃よりBCGワクチンの汎用性に関心を持つ学者、メタアナリシスをする学者が増えています。
*measles vaccine(麻疹), BCG、oral polio vaccine(経口*小児麻痺ワクチン), DTP vaccine 
(ジフテリア・百日咳・破傷風混合ワクチン)
*急性灰白髄炎、脊髄性小児麻痺
 
*Peter Aaby (デンマーク:1944~) 人類学者 医学博士 
コペンハーゲン大学教授(University of Copenhagen)
2000年にデンマークで最高位の医学賞を受賞(Novo Nordisk Prize)
 
*Christine Stabell Benn:南デンマーク大学教授(Professor of Global Health, University of Southern Denmark)
2011年コペンハーゲン大学卒業(University of Copenhagen)
医学博士(Doctor of Medical Science)
 

 

6. Mihai Netea※博士(オランダ)の再検証

※ヨーロッパの人名は読みが国により異なりますので、ローマ字のみとします。

2016年にオランダの*Mihai Netea博士(ナイメーヘン・ラドバウド大学)が
新たな研究成果を発表。
「BCGワクチンは接種初年度にウィルスを含む他の感染症の30%くらいに効果がある」
と報告しています。
この研究はBCGワクチンの汎用性研究として高い評価を得ており、現在の論議の根拠ともなっています。

*Mihai Netea博士は1968ルーマニア生まれ、母国のCluj-Napocaで医学を学び、オランダ中部の
ナイメーヘン・ラドバウド大学医学部で博士号取得(Radboud University Nijmegen)。
2008年ナイメーヘン・ラドバウド大学教授。
公衆衛生、世界の感染症など国際保健(global health)の研究者であり、医薬品開発のリーダー。

最終更新日 2021年4月25日

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