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長寿社会の勝ち組になるには(その45) パーキンソン病抑制とCOVID-19治療の共通性

2020年6月30日

現在のパーキンソン病患者は世界で約1千万人。
この数字は新コロナウィルスの感染者数に匹敵しますが、新ウィルスは
治癒した患者(少なくとも表面的に)が相当数を占めますから
増加する一方のパーキンソン病患者ほどの数になりません。
パーキンソン病はアルツハイマーを超えて最も急速に
増加している脳疾患。
過去25年間に世界では2倍ともなっています。
同時期の数字ではありませんが
米国は2008年からの過去10年間で35%増。
日本は平成の30年間で約8万人強から16万人強へと倍増。
いずれも病院、診療所で受診した方だけの数字です。

このコラムは「天然オメガ3脂肪酸の抗炎症メカニズム:
脂質メディエーターのレソルビン(Resolvin)とは」
2017/11/25とレゾルビン解説に関しては重複します。

パーキンソン病抑制と新コロナウィルス治療には旬のイワシを毎日でも食べましょう。
イワシの種類と調理法が解説されています。

 

1.  パーキンソン病抑制と新コロナウィルス治療の共通性

新コロナウィルスは相変わらず正体の全貌が掴めないままに
拡大を続け、世界の死者が50万人を超えたようですが、
大きな特徴として判明しているのが、大小血管の血流を阻害する
凝血塊(クロット)が出来やすくなること。
重症患者の細胞が炎症を起こし、呼吸困難ばかりでなく、脳卒中も
大きな死因となっていますが、ミトコンドリア活性が失われて
オートファジー機能が崩壊するのはパーキンソン患者と共通する兆候です。
  
先週はこの対策に窒素ガス治療が有望なことをお知らせしましたが、
新たにご紹介するのは魚油によって体内生成される生理活性物質です。

2. “パーキンソン病をレゾルビンで解決”オクスフォード大学

アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、脊髄小脳変性症
などの脳視神経を変性させる神経変性疾患(neurodegenerative disease)の発症要因は
ミトコンドリア異常、RNA代謝異常、遺伝子変異、エピゲノム(遺伝子発現調節機構)異常、
グリア細胞異常など様々で原因不明なことが多い難病です。

昨年2019年10月に世界有数の医学研究水準を持つ
オクスフォード大学(University of Oxford)の整形外科、筋骨格科学部門の
ステファニー・ダキン(Stephanie G. Dakin)博士らは
「パーキンソン病をレゾルビンで解決」との論文をサイエンス誌に発表しました。
「Resolvin-g Parkinson’s disease」
薬学、医学分野で物質名となっているResolvin(レゾルビン)は、本来「解決する」、
「回復する」の意味の英語名。
それにに-gをつけて解決中とのダジャレ?ユーモア?

パーキンソン病は神経細胞の炎症(Neuroinflammation)による損失を
回復できないことで発症しますから、炎症のメカニズム解明が必要です。
研究チームは家族性など一部のパーキンソン病の原因であるといわれている
シヌクレイン・タンパク質に焦点を当てて実験をしています。
 
研究チームは神経細胞の損失は主として*レビー小体(Lewy body)に、
シヌクレイン・タンパク質が過剰集積されることで
神経伝達が失われ、ドーパミン作動を損なうことが原因ではないかと仮定。
レビー小体は主としてシヌクレイン・タンパク質(α-synuclein protein:α-syn)で
作られていますが
その集積量(α-syn overexpression)と炎症(neuroinflammation)との関連や
運動機能(motor behavior)低下の関連を動物実験で調査して発表しました。

神経細胞の炎症(Neuroinflammation)の原因は多様であり全貌は未解明ですが、少なくとも動物実験では
シヌクレイン・タンパク質の過剰蓄積がパーキンソン病の原因物質(の一つ?)であり、
レゾルビンが過剰蓄積を防ぐことで炎症が低下することを報告しています。
「Treatment of Syn rats with RvD1 reduced neuroinflammation,
restored dopaminergic neurotransmission,
and prevented subsequent development of neuronal deficits and motor impairment.」
 
*レビー小体(Lewy body):
レビーは発見したドイツの神経学者フレデリック・レビー(Frederic H. Lewy)の名。
神経細胞の内部に見られる異常な円形状の構造物(封入体)です


 
3.レゾルビンResolvin:Rvとは

レゾルビンは「解決する」、「回復する」の意味の英語名
炎症を抑制する機能を持つ生理活性脂質です。
レゾルビンは体内で天然魚油からの*幾つかのオメガ3脂肪酸より作られる
オータコイド*であり、ホルモン、神経伝達物質とは異なります。

レゾルビン(Resolvin)にはいくつかの異なるタイプがあります。
DHA, EPA, DPAなどオメガ3脂肪酸の異なるタイプで、異なるレソルビンが
作られます。
同タイプの中も細分化されて、主要なものだけでも3種。
DHA由来のレゾルビンRvD’s(1から6まで分化)、
EPA由来のレゾルビンRvE’s(1と2に分化)、
またアスピリンや*スタチン系のドラッグが関わり産生するDHA由来の
レゾルビンAT-RvD’s(Aspirin-Triggered resolving D’s )があります。
*スタチン系:悪玉コレステロール値低下に使用される医薬品メバロチンなど
HMG-CoA還元酵素*阻害薬の総称.
*HMG-CoA:(hydroxymethylglutaryl-CoA:
ヒドロキシメチルグルタリルCoAレダクターゼ)
(成因と機能は専門的ですので省略)

 

 
*オータコイド(Autacoid)動物 体内で産生され微量で生理・薬理作用を示す
生理活性物質。
*幾つかのオメガ3脂肪酸
EPA:eicosapentaenoic acid(エイコサペンタエンサン)
DHA:docosahexaenoic acid(ドコサヘキサエンサン)
DPA:docosapentaenoic acid(ドコサペンタエン酸)
* DPAは通称でclupanodonic acid(クルパノドニック酸:イワシ酸)とも。

レゾルビンは疫学的には炎症を制御する中心的物質であろうことが
知られていましたが、作用機序は明らかではありませんでした。
物質の機能解明は人工合成によって大きく前進しますが、
レゾルビンは2008年には人工合成に成功。
オメガ3脂肪酸の持つ抗炎症作用などの中心的な役割を果たす物質として
各方面で研究が続けられていました。
新薬開発につながる最初のメカニズム発見はロンドン大学の
モーロ・ペレッティ教授(Mauro Perrett)らの関節炎研究チームにより
2009年10月末のサイエンス誌に発表されました。
モーロ・ペレッティ教授らの研究は、我々の体が魚油のオメガ3を
レゾルビンに変換し、どのように炎症を減らすのに役立てるかのメカニズム解明。
このレゾルビンは少量で大きな効果が得られる強力な作用を持つ
免疫物質ともいわれます。


 
4. レゾルビンResolvinの細胞炎症抑制作用

関節炎などで炎症が激しくなるのは体の免疫力が間違って健康な組織を攻撃すること、
すなわち白血球が血管内皮(endothelium)にこびりつくことです。
*モーロ・ペレッティ教授ら関節炎研究チームの実験で解明されたのは
レゾルビンのD2タイプが内皮細胞で少量の窒素を合成し、
内皮細胞に白血球がこびりつくのを防ぎ炎症を抑えることの発見。
これは魚油のオメガ3脂肪酸がCOVID-19のような感染症や
脳視神経疾患の認知症やパーキンソン病など、タイプの異なる様々な
炎症に役立つことを説明します。

ロンドン大学クイーン・マリー免疫薬学部ペレッティ教授らの関節炎研究チームによりレゾルビンの
タイプD2(RvD2)が鍵(リガンド)として体内の感染防御に機能する顆粒白血球(leukocytes)
細胞の鍵穴である*G蛋白質共役型受容体(GPR18と名付けられました)に
結合することが発見され、オメガ3脂肪酸の抗炎症機能が細胞レベルで
明らかになりました。
 


5. レゾルビンは脂質メディエーター

プロスタグランディン、ロイコトリエン、ヒスタミン、内因性カンナビノイドなど
生物活性(生理作用)を持つ脂質は*脂質メディエーター(mediator)とよばれ、
悪玉、善玉の両作用がありますが、主として細胞外に 放出され、他の細胞の
細胞膜受容体に結合することによって作用します。
レゾルビンは善玉の脂質メディエーターです。


6. レゾルビンD2の受容体となるG蛋白質共役型受容体の発見にノーベル賞

レゾルビンの鍵穴(受容体:receptor)となる
*G蛋白質共役型受容体(G protein-coupled receptors:GPR)の
全容が次第に明らかになるに従い、鍵(リガンド:ligand)となる
レゾルビンの脂質メディエーターとしての解明が一気に進みました。
 
G蛋白質共役型受容体18(GPR18 receptor)は近年になり
レゾルビンD2受容体(RvD2 receptor)とも呼ばれています。
当初実験に使用されたのはレソルビンD2(RvD’s2)でしたが、その後、
レゾルビンは成因ごとに細分化されて研究が進められています。
 
*G蛋白質共役型受容体の構造解明は医学の発展に多大な貢献をしたことにより
2012年にノーベル化学賞を受賞しています。



7. COVID-19治療を担当した武漢グループが疫学的手法でレゾルビンを解明

レゾルビンD2(RvD’s2)の機能は多様な関節炎(arthritis)の炎症を予防し、
治療するだけでなく、敗血症(sepsis)、脳梗塞など、炎症を起因とする
様々な疾患予防にも役立つことが期待されています。

最近になりレゾルビンがパーキンソン病、認知症など
脳神経変症に効果があるという研究が幾つも出るようになり
2019年末に流行が始まった武漢新型コロナウィルス罹患者への
投与でも、脳梗塞制御が立証されたと発表されています。

新型コロナウィルスの特性は肺などの呼吸気管や、心臓など循環器ばかりでなく
脳内血管内に凝血塊(クロット)が発生すること。
凝血塊(クロット)による脳梗塞を防ぐのにレゾルビンD2が働いていることが
武漢より報告されています。
 


8. 参考
DHA(docosahexaenoic acid)とEPA(eicosapentaenoic acid)の違い

EPA とDHAは近似種類で体内ではEPA からDHAがつくられます
(DHAからEPA のケースも あります)。
この区別は炭素の二重結合の全体数が異なることで区別されています。
 
EPAは血液の流れを改善し、血液の粘度をさげて心筋など血管内の血栓を防ぐ作用、
DHAは脳内血流のスムースな循環や、過労や加齢による視力の低下を防ぐ作用が
注目されています。
双方ともに血液を凝固させにくくさせる作用、血管弛緩作用がありますが、
疫学的な研究成果であり、作用が直接なのか、細胞を取り巻く
筏状膜(ラフト)に介在する物質があるのか、そのメカニズムの全てが
解明されているわけではありません。
植物性のα-リノレン酸はごくわずかですが、体内でDHAやEPAに合成されます。

最高に美味なシコイワシ(セグロイワシ)

 


9. 参考
困難になってきた安全、良質な魚の調達

世界中で獲れ、食される魚ですから、ルーツを問わなければ無尽蔵といえますが
魚は加工食品を避けて生魚が得られれば、健康的な食生活ができるわけではありません。
健康的なつもりで魚食を続けて不健康になった事例は数えきれません。
なぜならば世界中で養殖魚、汚染魚が急速に増えているからです。
世界で日常的に食されるメジャーな魚の相当部分は養殖魚。
抗菌剤、成長ホルモンが多用されているのがほとんど。
世界のメジャー養殖魚はサーモン、プラーニン(アジアに多い)、
キャットフィッシュ(ナマズ)など。

 

天然魚はダイオキシン、水銀、ヒ素などに汚染されているケースが少なくありません。

日本ではマグロ、ブリを筆頭に、マイナー、メジャーを問わず
ほとんどの魚種が養殖化されています。
メジャーな魚種で養殖化されていない(出来ない)のはイワシ、カツオくらいでしょう。
養殖魚は漁獲、消費の全体量からみれば3割がやっとですが、メジャーなマグロ、ブリ、
ハマチ(メジロ)、タイ、ヒラメは5割以上が養殖。
魚の総消費量の半分以上は輸入ですから、輸入魚を加えれば消費者は5割以上の養殖魚を
摂食していると推測されます。
スーパーや魚屋さんで売られる魚やその加工食品の知識を学ばねば
健康を得る食生活は達成できません。
 
同様にサプリメントの原料も「魚の廃棄部分」使用ならば調達は容易ですが
重金属汚染、抗菌剤汚染、ダイオキシン汚染の危険性ばかりか、
雑多な種類の混合廃棄部分は、ほとんどが「煮取り」製法と長時間放置により
過酸化脂質となっています。
「天然魚油のオメガ3脂肪酸はバイオ合成オメガ3とは効果が異なります」

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最終更新日 2021年11月28日

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