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遺伝子工学による不妊治療と若返り: ブドウ・レスベラトロールが卵巣老化を防止

2013年9月6日

 

1.卵巣は最も老化の早い器官

男女にかかわらずアンチエージングは大きな関心事。
特に女性の美容にとって最大の敵が老化.
ほとんどの女性にとって抗老化は最大の関心事かもしれません。

ところが他の体内器官に較べ老化が早い卵巣(ovarian)に関する細胞の代謝については
研究論文があまりありませんでした。
女性は30才を過ぎると卵巣の質が低下し始め、卵母細胞(oocytes)の染色体異常がみられるように
なるといわれます(米国人)。また40才が近づくとその質は急降下。
この卵巣機能低下のプロセスを把握することが老化防止、不妊治療の近道として
実験を繰り返しているのがハーバード大学医学部医学部幹細胞研究所教授の
ジョナサン・ティリー博士(Jonathan L Tilly)と長寿のレスベラトロール機能を発見した遺伝学部の
デーヴィッド・シンクレアー博士(David A. Sinclai)ら。
二人は今年6月に新たな論文を発表しました。
ジョナサン・ティリー博士はマサチューセッツ州総合病院において不妊治療にも取り組んでいます。

2.加齢のメカニズムを理解することにより不妊治療が大きく進展する

新しい論文はセル・メタボリズム誌(Cell Metabolism)に発表されましたが、テーマは
加齢と卵子の質低下による不妊。
「生殖細胞系列における老化と女性の不妊:
Germline Energetics Aging and Female Infertility

卵巣機能への関心が高まるとともに最近の研究では哺乳類ならば
生殖幹細胞系列(germline stem cells)の活動を通して成人女性の誰もが
日常的に卵母細胞を生成していることが明らかになりました。

この論文では老化と卵子の質低下に関して直接的な関係を解り易く説明し、
不妊治療が加齢のメカニズムを理解することにより大きく進展すると主張しています。

細胞内小器官のミトコンドリアは細胞の重要なエネルギー源であり、
細胞エネルギー論が老化に重要な役割を果たします。
著者たちはミトコンドリア機能の低下が胎芽と卵子の質低下を招き不妊(Infertility)につながることを説明。
妊娠年齢に負の影響を与える事象に打ち勝つために、安全で効果的な手法を模索。
生物学的に卵子前駆細胞(egg precursor cells:EggPC)と呼ばれる
卵原細胞;幹細胞(Oogonial stem cells :OSCs) を卵巣より発見し採取。
試験管培養(in vitro fertilization :IVF)で増殖させ研究をつづけています。
この発見はミトコンドリアの源流ともなるもので胎芽と卵子の質、不妊を改善する細胞の適正な
効果測定に役立つといわれます。

3.培養した他人の卵巣前駆体を移植して若返り?

著者らは卵巣または未熟な卵子、ミトコンドリア、前駆卵細胞は
形態学的(morphology)にも機能にも近似性が大きいことを指摘。
母と子の自然なミトコンドリア移転と同様に前駆卵細胞を培養、移植して
若返りのミトコンドリア供給源として使用することを提案しています。
(ただし、若いドナーの前駆卵細胞を老化した女性に
供給する手法は倫理的、法的に規制される遺伝子操作となる問題があるため、
現在は同一人物の卵母を操作する研究が進んでいるようです)
ミトコンドリアの増量と活性化は老化防止にもつながる手法として知られています。
不妊治療法の進歩が若返りを意味するという主張の根拠です。
ティリー教授が発表した人類の卵子前駆体に関する研究第1段階での結論は
今年(2013年)開催された婦人科調査学会(the Society for Gynecologic Investigation :SGI)
で信憑性が確認されたといわれます。

 

4.最新の不妊治療で先駆するオバ-サイエンス(OvaSciende)社

著者の二人は不妊治療とアンチエージング医薬品開発を最大の企業目標にする会社を
ケンブリッジ(ボストン:マサチューセッツ州)に創立しています。
会社はナスダック上場企業としては高値を付けているオバ-サイエンス社(OvaSciende)。
オバ-サイエンスは不妊治療用の卵子の人工培養や
レスベラトロールなどスタック(sirtuin-activating compounds:STACs)
といわれるサーチュイン活性化物質によって卵巣機能を活性化させる研究を続ける会社。
二人の専門分野である遺伝子工学、幹細胞工学の技術を駆使し、
幹細胞からの様々な卵子合成なども行っているようです。

オバ-サイエンス社は生体の卵巣に前駆細胞を見つけて純粋化、培養して卵子の質改善、
再生医学に役立てています。
また、ミトコンドリアの優れた機能が卵子の質にいかに大きな影響を持つか、
卵子前駆細胞培養技術が安全な不妊改善にいかに貢献するか、その概念を解説。
これ等のデータは(自称)壮大といわれ、これまでにないグレードの人為的な胚芽細胞培養と
移植が実験されているようです。

卵子の質を制御する技術の急速な発展は現行の人工授精、体外受精の不妊治療以外に、
あらたなる手法を導入するだろうといわれていますが、
倫理的、法的にクリヤーしなければならない点も多々あります。
現在は妊娠能力の判定にAMH(anti-mullerian hormone)を測定して残存卵母供給量を予測していますが
今後は当該女性のミトコンドリアなどいくつかの細胞内小器官の量と活性を測定することも可能となるでしょう。

 

5.ブドウ・レスベラトロール研究の新たな潮流:長寿遺伝子活性化の真実を証明

シンクレアー博士(David Sinclair)らによる長寿を達成させるタンパク質の活性化に
関与する物質の発見は分析実験のターゲット識別に使用する蛍光物質による作用を誤認したと
指摘されたことがありました。
博士らはそれに対する答えとして新たな実験を試み、かっての実験結果が正しかったことを
今年の3月に証明して見せました。(Science 8 March 2013)

長寿にかかわるたんぱく質はNAD依存性脱アセチル化酵素(アセチル基を脱アセチル化する)と
呼ばれるサーチュイン(Sirtuin)のことですが、シンクレアー博士らは、その活性化がレスベラトロールなど
STAC(sirtuin-activating compounds:サーチュイン活性化物質)により促進することを再度証明。
Evidence for a Common Mechanism of SIRT1 Regulation by Allosteric Activators 
証明されたのはサーチュイン活性 がSTACによって促進されるのは
特定のアミノ酸の隣に疎水性アミノ酸が存在する配列を持つ天然ペプチド基質によるもの。
このような酵素上の特異な場所での反応はアロステリック(allosteric)と呼ばれています。

レスベラトロールなどSTACにはミトコンドリア の機能活性化作用があることが知られていますが、
新たな実験によってSTAC無にはミトコンドリアが活性化しないことも確認されています。

シンクレアー博士らは,これまでに, 赤ワインに含まれるレスベラトロールの100倍もの活性を持つ
スタック(STAC)を4000種開発したといわれています。
しかしながら、かってシンクレアー博士らがガンや糖尿病の医薬品開発に
スタック(サーチュイン活性化物質)として実験に使用したのはブドウ・レスベラトロールを
化学合成したもの。
実験や治験では合成物質の投与量が天然のブドウや赤ワインの一日摂食量を数百倍も上回る量であったために、
効果は得られたものの、安全性が確保できませんでした。
その後多くの研究者から天然のブドウ・レスベラトロールならば少量で十分な効果があるという
研究論文が続出しました。

最終更新日 2021年8月13日

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