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細胞老化と癌(その2):免疫細胞老化の修復とレスベの役割 メタボが癌になり易いのはTリンパ球の老化

2017年8月4日

 

2017年7月からは癌予防、再発防止、そして長寿に役立つ、細胞老化の
メカニズムに関する内外の最先端研究情報をシリーズでお届けしています。

 

 

 

1. 癌発症のメカニズムは細胞老化(セネッセンス)の解明から

癌(がん)との戦いに完治、格安を目指している「遺伝子編集」の実現が近いものに
なりましたが、これは治療面での革新。
やはり癌は予防すべきものではないでしょうか。
癌は遺伝子変異によって発症します。
その形態は様々ですが、変異が起きる原因の解明と対処法も
進化しています。
最先端では老化した細胞が、それだけで終焉するわけではなく
細胞を取り巻く組織に、ホルモン(サイトカイン)を分泌し、
オートファジー現象*によって幹細胞性を持った細胞が再生されることが
マウスレベルで立証*されています。
*「Autophagy maintains stemness by preventing senescence:
オートファジーは老化を防いで幹細胞性を維持している。」
この研究は癌細胞が幹細胞性を持って転移していくだろうことの、
解明の糸口となるでしょう。
この細胞老化(celular senescence:セネッセンス)研究の第一人者として
認められているのがスペインのキース博士ら(Dr. William M. Keyes)。

多くの学者、研究者は最先端研究の成果を医薬品開発、治療に生かそうとしますが、
最も重要なのは解明された事実に沿って食生活、運動法などを改善し、
発癌を予防することです。
高血圧、高血糖、高脂血が引き起こす生活習慣病は致死率の高い癌(がん)発症の伏線となり
健康保険制度困窮の最大原因となり得ますから、健康寿命100才時代到来の最重要課題は
癌発症の予防です。
*オートファジーとは?
ノーベル賞受賞者大隅博士

 

 

 

2. ウィリアム・キイス(キース)博士の志は利益よりがんの撲滅

ウィリアム・キース博士(Dr. William M. Keyes)の履歴
2016 Team Leader, IGBMC, Strasbourg, France
2009 Group Leader, Centre for Genomic Regulation (CRG), Barcelona, Spain
2002 Postdoctoral fellow, Cold Spring Harbor Laboratory, USA
2002 Ph.D., Dept. of Physiology, University of Alberta, Edmonton, Canada
1996 M.Med. Sci, Anatomy and Pathology, Queens University Belfast, N. Ireland
1995 B.Sc. (hons), Physiology, University College Galway, Ireland

現在の勤務先IGBMCはL’Institut de génétique et de biologie moléculaire et cellulaire.
邦訳で「分子細胞学研究所」.風光明媚なアルザス地方ストラスブルグに立地しています。
(英:INSTITUTE OF GENETICS AND MOLECULAR AND CELLULAR BIOLOGY)
1994 年にフランスのバイオケミカル研究の先駆者ピエール・シャンボン氏(Pierre Chambon)によって
設立されたヨーロッパ随一の分子細胞学研究所。
永年にわたり皮膚幹細胞の分子的メカニズムthe molecular mechanisms of skin stem cell aging」が
キース博士の研究テーマですが、発がんと転移のメカニズム(the mechanisms of tumor initiation and transformation)は簡単には答えの出ないロングランのテーマとなっています。
これからの追求は癌抑制遺伝子タンパク質P53ファミリーのP63関連遺伝子。
その研究途上でP63のアイソフォーム(異体)が毛包、毛根に存在し、そこから癌(がん)の発現、
増殖、転移などの情報を得られることを確信しています。
これは癌の予防、治療に大いに役立ち、コストも低額な有望手段となり得ます。

 

 

3. 肥満内臓脂肪内でTリンパ球老化が加速し癌が発生しやすくなる

メタボリック・シンドロームは高血圧、高脂血、高血糖に注意などと言われても
「死ぬわけでは無いから大丈夫」と高をくくっていた人に衝撃を与えた論文が
あります。
論文のテーマはメタボが促進する免疫細胞の老化で癌抑制遺伝子が不活性化し、
癌の発生に繋がること。
慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の佐野元昭准教授、白川公亮助教ら
が2016年11月8日に米国の専門誌に発表した論文*では内臓脂肪型肥満による
生活習慣病と免疫機能低下の発症基盤に、免疫細胞(とくにTリンパ球)の老化が
深く関与していることを報告しています。
*「肥満によって内臓脂肪内でTリンパ球老化が加速する:
Obesity accelerates T-cell senescence in visceral adipose tissue」
「The Journal of Clinical Investigation」

 

 

4. 免疫老化が深く関与する個体の老化

佐野准教授らのマウス実験では(詳細は省略)肥満した内臓脂肪組織内で
見出された老化Tリンパ球集団は、健康な若齢マウスには存在せず、
加齢に伴ってリンパ組織中に出現し、高齢マウスの免疫老化の原因となる
Tリンパ球と非常に良く似た性質を持っていました。

教授らの細胞老化に関する論文要旨を箇条書きすると
a.「内臓脂肪型肥満は糖尿病、心筋梗塞、脳卒中、心不全、
感染症、がん、自己免疫疾患の発症などとも密接に関係している」
b. 「内臓脂肪型肥満では糖尿病や脂質異常、高血圧が進行して、
内臓の老化が加速し、死期を早めている」
c. 「内臓脂肪の蓄積が心臓血管、腎臓、肝臓、骨格筋などの全身の臓器にまで
影響を及ぼし、その原因は内臓脂肪組織の中での活発な免疫応答が
過剰な炎症反応を引き起こし、その影響が全身に波及する」

d. 「個体の老化には免疫老化が深く関与しているだろう」
e. 「免疫老化とは、加齢に伴う免疫細胞(とくにTリンパ球)の機能異常」
f. 「高齢者の感染に対する抵抗力低下や、過剰な炎症反応、
糖尿病や心血管疾患(脳卒中、心筋梗塞)の発症頻度の増加の原因となっている」
g. 「細胞には細胞分裂の回数に限界があり、加齢とともに細胞は老化する」
h. 「ヒトの正常な体細胞が示すこの分裂回数の限界(分裂寿命)は“細胞老化”と呼ばれ、
細胞が過度に増殖してがん化することを防いでいるものと考えられている」
i. 「分裂寿命に達する以前の細胞も発がんの危険性のあるストレス(DNAの損傷、
テロメアの短小化、がん遺伝子の活性化など)に曝露された場合に、
すみやかに細胞老化と同様の不可逆的(irreversible)な分裂停止を起こすことが
明らかになってきている」

 

 

5. オステオポンチン(OPN)の分泌がPD-1酵素の活性を失わさせる

佐野准教授らによれば、「CD153陽性PD-1陽性Tリンパ球では、恒常的に
高いレベルの* PD-1の発現が認められますが、これらのTリンパ球から
オステオポンチン(OPN)の分泌があると、PD-1刺激によるブレーキが全くかからない」
「オステオポンチンが、内臓脂肪の過剰な炎症、インスリン抵抗性を誘導している」
「CD153陽性PD-1陽性Tリンパ球が増加するメカニズムに、Bリンパ球が負の関与をする」
「オステオポンチンは様々な組織や血液、尿などに存在し、組織構築や炎症、創傷治癒などの
生理的・病理的現象に関わっています。
一方で、オステオポンチンは癌組織において高発現しており、その発現上昇は
予後不良と相関しています。
これまでの多くの研究から、オステオポンチンが腫瘍形成や癌の浸潤・転移と
密接な関わりがあることが示唆されています」

*PD-1(Programmed cell death1)は免疫抑制機能を持つレセプター(受容体)として
知られています。
免疫機能抑制をさせない医薬品(抗PD-1抗体)はT細胞を活性化させて癌の制御に働きます。

*「新抗がん剤開発のヒントはブドウレスベラトロールの機能解明:
長寿の酵素が癌遺伝子発現と脳血管障害を制御」
将来性抜群のヒト型抗ヒトPD-1 モノクローナル抗体

 

 

 

6.  ブドウ・レスベラトロールがミトコンドリアの代謝過程を活性化

英国中部のレスター大学癌研究と分子医薬品学部の研究者が
癌の発症メカニズム探究途上で見出したのがブドウ・レスベラトロールの
癌細胞内における癌抑制物質の活性化です。
「Red wine chemical remains effective against cancer
after the body converts it:
赤ワインの化学物質(ブドウ・レスベラトロール)は体内化学反応で
ガン退治の有効物質に変換」

ブドウ・レスベラトロールは硫化レスべラトロール(resveratrol sulfate)や
グルクロン酸抱合代謝産物(glucuronide metabolites)に代謝された後も
細胞内に取り込まれており、ブドウ・レスベラトロールの細胞内濃度は
これまで考えられていた以上にはるかに高くなっていました。
ブドウ・レスべラトロールは硫化レスべラトロールに変化することにより
動物の細胞内にとりこまれた後、ブドウ・レスべラトロールに再生されることです。
これはブドウレスベラトロールが多種の疾病に大きく貢献する主要物質であることの
立証にほかなりません。
我々はネズミの血漿中や他の様々な組織に、この遊離レスべを多数見出すことができました。
硫化レスベラトロールより再生されたブドウ・レスベラトロールは癌細胞内のある
抑止成分(癌抑制酵素)を癌細胞に取り込ませ、
がん細胞の分化を抑止、成長鈍化に作用します。

 

「天然ブドウの抗酸化成分が網膜構造を護る:
萎縮型黄班変性症も酸化ストレスによる損傷

 

 

 

7. お酒ばかりでない脂肪肝:非アルコール性脂肪性肝炎ナッシュ(NASH)

慢性肝炎、肝臓の繊維化進行、肝硬変、肝臓癌へ発展するといわれる脂肪肝炎。
お酒が原因と言われた脂肪肝(alcoholic steatohepatitis:アッシュ)と異なり、
ナッシュ(NASH)*はインシュリン抵抗性を基とする代謝異常により、脂質が肝臓に蓄積します。
2000年に権威ある学会誌ランセット(Lancet)に
「Insulin resistance iron and the liver(インシュリン抵抗性、鉄分、肝臓)」という
文献が掲載され、確定的なインパクトを与えました。
この論文発表により鉄分の過剰蓄積が糖尿、肝硬変の原因となることが決定的ともなりました。
*ナッシュ(NASH)は非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis)

8. (参照)骨髄細胞(B細胞)と胸腺細胞(T細胞)

骨髄細胞(B細胞)
抗体を造る細胞(cell)は骨髄由来の骨髄細胞。
骨髄(bone marrow)の英語頭文字でB細胞と呼ばれます。
この細胞に伝達物質(サイトカイン:cytokine)で指令を与えるのが
多田富雄博士の発見で著名なヘルパーT細胞(Th2細胞)。
ヘルパーT細胞は胸腔にある胸腺(Thymus)で造られる胸腺細胞(T細胞)の1種ですが、
骨髄細胞の働きを助けることから名付けられました。
Thのhも英語。助けるものhelperの頭文字。
サイトカインは広い意味を持つ言葉で、インターロイキン(Interleukin:ILと省略される)など
数百種類があるといわれるホルモン様伝達物質(細胞間のコミュニケーション機能)。

胸腺細胞(T細胞)
血管やリンパ管を循環する白血球の7割を占めるのが胸腺細胞。
胸腺(Thymus)の英語頭文字でT細胞と呼びます。
T細胞には他に自分自身以外を殺すキラーT細胞(Killer T cell)、それを抑制(suppress)する
サープレッサーT細胞(Suppressor T cell)があります。
日本の多田富雄博士がこの分野の第一人者です。

 

 

9.(参考)癌を予防する食生活

癌の始まりは細胞の炎症から。細胞の炎症が遺伝子変異へと進行します。
癌の予防にはポリフェノール含有食品が必須ですが
日本人の果物、野菜離れは深刻。若者の6割近くがフルーツから遠ざかり、
習慣的に食べる方は10%もいないというデータがあります。

(プエラリア解説が第6項にあります)
「ポリフェノールとは:細胞を活性化する若返りの抗酸化物質」

「ミオカイン(マイオカイン)ブームに警告:
癌(がん)、糖尿病、ダイエット研究の最前線情報は玉石混交」

「ウリ科の強精強壮成分シトルリンで酷暑を凌ぐアジア人の知恵」

 

「スイカのシトルリンとバイアグラ効果:」

「シトルリンここのつ(9)の何故? Q&A」

亜鉛はカルシウムとともに数少ない、不足しがちなミネラル。
スイカと相性が良いミネラルですから、牛肉、レバーや
卵を一緒に食べることをお薦めします。

初版: 2017年8月5日
改訂版:2018年1月31日

最終更新日 2021年5月3日

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