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細胞老化と癌(その6): 網膜芽細胞腫のRb遺伝子衰弱が癌(がん)を活性化2017/12/17

2017年12月17日

  1.「全ての道は癌(がん)に通ず」「癌(がん)は一日にして成らず」 2.網膜悪性腫瘍の網膜芽細胞腫から発見されたRb遺伝子(Retinoblastoma Gene) 3.間質の線維芽細胞活性化が癌(がん)細胞の増殖を促進する 4.癌(がん)の転移はRb癌抑制遺伝子の機能破壊 5.癌細胞が幹細胞性を持って転移? 6.遺伝子のたんぱく質構造がどのようにがん細胞に変化していくか (参考)レスベラトロールはがん細胞の増殖を防ぐだろう:ネブラスカ大学がん研究所 (参考)乳癌細胞活性化促進遺伝子がエストロゲンを増加させ発がんさせる 1.「全ての道は癌(がん)に通ず」「癌(がん)は一日にして成らず」 幼児に遺伝する網膜芽細胞腫の遺伝子発見が多くの癌(がん)の治療や予防の進歩に 大きく貢献したことは一般にはあまり知られていません。 このことは緑内障、加齢黄班変性症、網膜芽細胞腫や、生活習慣病、癌(がん)など 多くの疾患は根底で繋がっているために、標的(原発巣)だけの治療では解決できないことを 示唆しています。 「全ての道は癌(がん)に通ず」ともいえるかもしれません。 人類に最強の難敵といえる癌(がん)とはいえ、癌(がん)が人体内で 生き延びて増殖するには、体の持つ多様な「癌(がん)抑制遺伝子」や免疫細胞など 癌細胞増殖阻止メカニズムの存在が邪魔になり、遺伝子が酸化ストレスなどで多少の変異をしても 簡単には発症しません。 まさに「癌(がん)は一日にして成らず」です。 癌(がん)が発症に手間取り、時間を要するために、警告されている発がん物質や、 発がん性が疑わしき物質に無関心な食生活や暴飲暴食も、 放射線、紫外線、化学物質などの悪環境に無頓着な生活も、無視されることが少なくありません。 それらが積もり積もって数十年後、変異を続けていた遺伝子が発癌(はつがん)、そして転移。 気付いた時は手遅れというケースが珍しくありません。 疑わしきに近寄らず。灰色は黑とみなすスタンスが必要です。 「日本人に多い消化器系ガンと下戸遺伝子の相関: 飲酒で臓器を傷める日本民族の遺伝的特質」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=187 発癌(がん)するのは、加齢や過労などで抵抗力(免疫力)が極端に衰えている時。 永らく頑張ってきた「がん抑制遺伝子」はすでに仮死状態。 幹細胞化が疑われる状態となると転移を続けた癌(がん)の勝利へとなります。 転移の進行メカニズムはいまだに研究途上。 大きく成長し、通常レベルのMRIなどで感知できるまでには時間がかかるために、 気付いた時は制御不能状態なことが多く、退治は容易ではなくなります。 癌(がん)の実態解明が進むとともに、研究者間の話題で癌(がん)の予防と転移防止に 赤ワイン・レスベラトロールやアサイーなど歴史ある食品の日常的摂食が 推奨されるようになり、喜ばしいかぎりです。 *上皮細胞に発症する悪性腫瘍が「癌種:carcinoma」、 それ以外の部位の悪性腫瘍を「肉腫:sarcoma」 あらゆるところに発症するのが「がん:cancer」と分けるのが医学的でしょうが 本稿では誰にもわかりやすい一般的な「癌(がん)」と表します。 *「癌(がん)は、がん遺伝子、がん抑制遺伝子、DNA修復遺伝子の変異によって 起こる病態」と「がん遺伝子の発見」の著者黒木登志夫博士が定義しています。 2.網膜悪性腫瘍の網膜芽細胞腫から発見されたRb遺伝子(Retinoblastoma Gene) 幼児に多い(1.5-2万人に一人くらい)眼の疾患である網膜芽細胞腫 遺伝性のがんが主体の網膜芽細胞腫は1986年に、原因遺伝子である Rb遺伝子(Retinoblastoma Gene)がMITのアラン・ワインバーグ(Robert Allan Weinberg)博士 により正式に*単離されました。 Rb遺伝子の特性は癌(がん)研究の進歩に大きく貢献し、その後も次々に 遺伝性がんの遺伝子が同定されました。 *網膜芽細胞腫を発症する家系の遺伝子連鎖解析による。 3.間質の線維芽細胞活性化が癌(がん)細胞の増殖を促進する がんの*間質にみられる線維芽細胞(CAFs:carcinoma-associated fibroblasts)は 体のいろいろな臓器にも一般的に存在します。 がんの間質では線維芽細胞が活性化されており、がん細胞の増殖を促進するらしいと 注目されていましたが、このことを実験で証明したのが順天堂大学の折茂准教授。 これまでの研究で、がんの間質の線維芽細胞が活性化されると筋線維芽細胞になり、 これが、がん細胞の増殖を促進しがんの進行を促進、転移に関わることが判ったそうです。 *間質は細胞の隙間に充填されているコラーゲンなどの線維が主体の組織。 線維芽細胞、白血球、内皮細胞などを含めて構成されています。 間質と細胞外マトリックスの機能に関しては大阪大学大阪大学蛋白質研究所の関口清俊教授の論文 「細胞外マトリックスの多様性と基底膜」に注目すべきでしょう。 関口清俊教授は間質の接着タンパク質フィブロネクチンの研究で著名ですが、 近年は間質の基底膜に注目されているようです。 また、教授らにより、癌(がん)の転移を促進する酵素MMP (matrix metalloproteinase) とその MMP 阻害タンパク質(RECK :reversion-inducing cysteine-rich protein with Kazal-motifs)の 研究も進んでいます。 4.癌(がん)の転移はRb癌抑制遺伝子の機能破壊 網膜芽細胞腫の遺伝子として発見されたRb遺伝子は細胞周期の間期(interphase)で DNA の複製(Synthesis:細胞周期ではS期と略される)を阻害するため、最初に発見された 癌抑制遺伝子(Tumor suppressor gene)として重要視されています。 健康な人体で癌(がん)が発症するには想像以上に難敵が多く、癌細胞が 返り討ちに会うのが普通なのです。 一般的には血中の免疫細胞など様々な力が勝り、癌は増殖できないのが普通ですが 癌が増殖を始めるのはこの抵抗勢力の負けを意味します。 抵抗勢力で最も力を発揮するのが網膜芽細胞腫研究途上で発見されたRb遺伝子と いうことが判り、がん対策は急速な進歩を遂げるようになりました。 その後、大部分の癌細胞では癌抑制遺伝子の機能が破壊されていることが発見され、 ています。 癌抑制遺伝子のRb遺伝子に注目している京都大学教授の高橋智聡博士によれば、 大半のがんでRb遺伝子の働きが不活性化しており、そのタイミングは、 がんが発生するときよりも、いったん出来たがんが悪性進展する過程においてだそうです。 Rb遺伝子が協働するのはDNAに特異的に結合するタンパク質(転写因子)のE2F転写因子群が 主となると言われていますが、博士によればiPS細胞誘導やがんの悪性進展にとって、 Rb遺伝子のエピジェネティック機構が抑制されることが、さらに重要だそうです。 博士は「がんの悪性進展におけるRb遺伝子の不活性化によるエピジェネティック変化は、 がんの悪性形質を制御するためのよい標的となるかもしれない」と述べています。 *その後に癌抑制遺伝子(Tumor suppressor gene)はP53蛋白質(TPまたはP53 protein)が 体組織に存在することが発見され、その増加が発癌のマーカーとなっています。 *エピジェネティクス(英語: epigenetics)とはepigenesisとgenetic(遺伝学)の 一部を使用した合体語 一般的には「DNA塩基配列の変化を伴わ ない細胞分裂後も継承される遺伝子発現 あるいは細胞表現型の変化を研究する学問 領域(ウィキなど) *細胞周期(cell cycle:セル・サイクル) 細胞分裂が完成し次の分裂が始まるまでの一連の過程。 DNAやミトコンドリアなどの細胞内小器官の複製がおこなわれる時期が 間期(interphase)と呼ばれる最も重要な過程。 光学顕微鏡の進歩により細胞分裂の過程が観察できるようになりました。 遺伝子変異により細胞周期が正常に機能しなくなった制御不能状態が癌(がん)です。 5.癌細胞が幹細胞性を持って転移? 細胞老化(celular senescence:セネッセンス)研究の第一人者として 認められているスペインのキース博士ら(Dr. William M. Keyes)の 論文*にはメタボが促進する免疫細胞の老化で癌抑制遺伝子が不活性化し、 癌の発生に繋がることが書かれていますが、この研究は癌細胞が幹細胞性を持って 転移していくだろうことの、解明の糸口となるかもしれません。 *「Autophagy maintains stemness by preventing senescence: オートファジーは老化を防いで幹細胞性を維持している」 同様にメタボが癌になり易いのはTリンパ球の老化という論文もあります。 慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の佐野元昭准教授、白川公亮助教ら が2016年11月8日に米国の専門誌に発表した論文ですが、内臓脂肪型肥満による 生活習慣病と免疫機能低下の発症基盤に、免疫細胞(とくにTリンパ球)の老化が 深く関与していることを報告しています。 「免疫細胞老化の修復とレスベの役割 メタボが癌になり易いのはTリンパ球の老化」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=562 新抗がん剤開発のヒントはブドウレスベラトロールの機能解明: 長寿の酵素が癌遺伝子発現と脳血管障害を制御 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=404 6.遺伝子のたんぱく質構造がどのようにがん細胞に変化していくか 遺伝子のたんぱく質構造であるクロマチン(chromatin)が、環境や食品などの 外的要因、体組織の慢性炎症、感染症などによってどのようにがん細胞に変化していくか。 クロマチン(chromatin)は、DNA結合制御タンパク質とよばれるヒストン(Histone)に DNAが絡む構造(ヌクレオソーム:nucleosome)が集合して構成されています。 DNA結合制御タンパク質ヒストンの化学反応の代表的なものには アセチル化、メチル化、リン酸化がありますが、長寿や発癌抑制のターゲットとなっているのは アセチル化(histone acetylation)。 ヒストンが酵素群(ヒストンアセチルトランスフェラーゼ:histone acetyl transferase:HAT)により アセチル化(アセチル基が加わる)すると、癌などの遺伝子発現を抑制し、 反対にヒストンがヒストン脱アセチル化酵素(Histone Deacetylase:HDAC)により 低アセチル化(脱アセチル化:アセチル基が加水分解により除去される)すると 発病に関わる遺伝子が転写を続け、増殖するといわれます。 実際に多くの脳疾患、アルツハイマー病、パーキンソン病、せき髄性筋委縮症や 様々な難病でもタンパク質のアセチル化レベルが不安定となっており その阻害剤は医薬品開発の主要ターゲットとなっています。 これはヒストン脱アセチル化酵素阻害作用と呼ばれ、赤ブドウなど食材が自然に持っている 癌遺伝子抑制機能です。 網膜芽腫タンパク質(Rb遺伝子)は、ヒストンが低アセチル化すると 増えているのが確認されているため発癌のマーカーとなっていますが、 Rb遺伝子の次に癌抑制遺伝子として同定され、最も多くの癌(がん)でみることが できるのが*プロテイン53(癌抑制遺伝子P53)。 プロテイン53(癌抑制遺伝子P53)は 癌抑制遺伝子(cancer suppressor genes)であり 腫瘍抑制遺伝子(tumor suppressor genes)でもあります。 最近の研究ではプロテイン53は限りなく最初に発見されたRb遺伝子(Retinoblastoma Gene)に 近いもの(類似するもの)といわれています。 (参考)レスベラトロールはがん細胞の増殖を防ぐだろう:ネブラスカ大学がん研究所 世界では毎年約138万人の乳がん患者が発生.45万8千人が死亡するといわれます。 乳がんは不妊や未婚女性に多いといわれますが原因はいまだに不明。 アメリカでは最大原因を都市化と西欧風ライフスタイルによる 肥満、糖尿病、動脈硬化を原因とする遺伝子変異と捉えています。 多くの乳がんのエネルギーがエストロゲンの増加であることは多くの科学者に 異論がありません。 エストロゲンは遺伝子細胞の転化形成に反応し、集約させます。 アメリカ癌研究協会(the American Association for Cancer Research:AACRに 所属するネブラスカ大学がん研究所教授のエリーナー・ローガン博士(Eleanor G. Rogan) らはブドウ・レスベラトロールがこの 転化形成を抑制することを発見しました。 エリーナー・ローガン博士らによれば「レスベラトロールはエストロゲン遺伝子の がん細胞転化を阻害し、癌生成過程の第一段階を予防する能力を持つ」 「この作用は乳がんになる全てのプログレッション(がん細胞の増殖)を防ぐだろう」とのこと この働きはレスベラトロールにエストロゲンを不活性化させる*キノン・リダクターゼ (quinone reductase:酸化還元酵素)を導入する作用があることを意味します。 博士らの実験によれば天然のブドウ・レスベラトロールならば、 わずか10マイクロ・モル(µmol/L)でがん転化を防ぐとのこと。 「ブドウ・レスベラトロールと乳がん治療のエピジェネティクス」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=432 *キノン・リダクターゼ エストロゲンを不活性化するなど化学反応の触媒となる酸化還元酵素. 多様な呼び名がありますが代表的なのがNAD(P)H:quinone oxidoreductase. (参考)乳癌細胞活性化促進遺伝子がエストロゲンを増加させ発がんさせる 乳がんの形成は患者の遺伝子の相違や異なった要因などによって、複雑な段階を経ます。 しかしながら多くの乳がんのエネルギーがエストロゲンの増加であることは科学者達に異論がありません。 エストロゲンは遺伝子細胞の転化形成に反応し、集約させます。 熊本大学の研究者らが英国のネイチャー誌(Nature Communications)に発表した研究は 「A cluster of noncoding RNAs activates the ESR1 locus during breast cancer adaptation」 ESR1(エストロゲン受容体:Estrogen receptor beta)周辺に集まる(適応する:adaptation) (未知の: noncoding)乳癌細胞活性化促進遺伝子(リポ核酸: RNA)群の正体究明です。 エストロゲン受容体ESR1は、Gタンパク質共役受容体の一つである GPR30 (G protein-coupled receptor 30)ともみなされています。 「G蛋白質共役受容体の構造解明とは?: 2012年のノーベル化学賞を受賞」 http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=193

最終更新日 2020年6月2日

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