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宇都宮市の大谷資料館に行きました

2016年8月31日

栃木県宇都宮市の大谷資料館を訪ねました.
孫の夏休み自由研究のヒントがあればと、軽い気持ちで連れていきましたが
想像以上の規模を持つ壮大な内部空間に圧倒されました。

深さ200メートル以上で南北30キロ以上に細長く拡がる大谷石の埋蔵量は膨大

採石後の広大な空間は様々なイベントのホールとなっています。
コンサートから始まったようですが、結婚式も増えているようです。

夏季でも温度が12℃くらい.酒類、野菜などの貯蔵庫にも使用されます.

すでに品質の良い均質な石材は少なく、採石量はピーク時の4分の1.
制作者の好みもありますが、石材や工芸品に使用される大谷石は
色調や風合い(テキスチャー)が均質なことが要求されていました。

近年採石できるのは削れたスポットが点々と散らばる石.
石材業者にはミソ(隠語?)とよばれています.
これはモンモリロナイト(montmorillonite)、ケイ素、アルミニウム、鉄分、
石灰質などを含む粘土状鉱物.酸化で赤黒や茶色に変色しています.
スポットの少ない石材は少なくなったようです。

ル・コルビジェ事務所で働いた坂倉準三氏設計.
まだ均質な石材採石が可能だったと思われることから、意図的にミソ入りを選択?
それとも大戦直後の混乱?
ル・コルビジェ氏は英国ホテルのファサードやピーコック・ルームに大谷石を使用.
柔らかな表情の凝灰岩の良さを広めました.
(写真)いしの・ひろし氏提供

色調や風合い(テキスチャー)は採石の地域、深度により異なり、好まれるのは
中間深度層から採れる均質でスポット(ミソ)の少ない石材.
ミネラルの重さで構成成分が異なるのでしょう。

(写真上)大谷石の塀と工芸品

近くに咲いていたイワタバコ(Conandron ramondioides)の花
イワタバコは大谷石のような軽い凝灰岩を好み、滝などの湿気の多い場所に自生します.

参考(いしの・ひろし)
湘南におられた自然派写真家のトニー羽太さんとは旧知ですが、
「大谷資料館」の取材写真の中になんとイワタバコの写真。
孫の夏休み自由研究に訪ねた資料館周辺で撮影されたと聞いて驚きました。
鎌倉のお寺にも軽質な凝灰岩と思しき岩壁や石垣にイワタバコが自生しており、
これで幻の鎌倉石の簡便な確認方法が増えたとうれしくなりました。
建築石材の様々な耐久性をテーマに石種の調査を続けていますが、大谷石、鎌倉石などの
軽い凝灰岩は主要な対象の一つです。
「鎌倉石は大谷石とは異なり、東日本を縦断するグリーン・タフ・ベルト(緑色凝灰石帯)に
属さない」という考えが一般的ですが、本州の狭い範囲で区別する必要はないと考えています。
密度など細かな相違はありますが、石材としての特質はほとんど変わらない
同タイプの凝灰岩でしょう。
http://www.botanical.jp/library_view.php?library_num=511

イワタバコは鉢植え園芸の人気種.首都圏以南ならば自生が珍しくありませんが、
日照を嫌い、湿気の多い環境が必要。
自生では排水の程度がマッチした土壌(岩石)の岩壁を好むようです。
岩壁は脆(もろ)過ぎては崩壊しますから、空気を含みながらも強い粘性が必須。
イワタバコは神経質。自生条件を満たす多孔質岩壁の素材は限られると思います.
吸水性が高く、密度が低い、礫(れき:つぶて)が程よい大きさの軽い岩石.
ピッタリなのが火山岩系の堆積岩である関東周辺の凝灰岩。
大谷石、鎌倉石は火山岩系凝灰岩ではイワタバコ自生には最適なのでしょう.
「イワタバコ自生の有無で苔と野草に覆われた鎌倉石の存在が推定できる」
新たな発見でした。           

(写真上下)一株のイワタバコで鎌倉石と推定できた石垣(円覚寺:鎌倉市北鎌倉)

鎌倉石の施工例はほとんどが古いものばかり.多孔質で植生が豊かですから、
削り取らなければ同定ができません。
観ただけでは、鎌倉石とはわかりません。
トニー羽太さんが大谷記念館周辺で取材した写真のヒントで今後は確かな識別が
簡単にできるのではと喜んでいます.

(写真上:参考写真)東慶寺切通のイワタバコ(神奈川県鎌倉市)

最終更新日 2021年8月2日

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