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医療新時代を開くナイアシン(NAD+ NMN)その3: 男性型脱毛症(AGA)は ナイアシンでプロスタグランディンD2の制御 ?

2018年8月4日

 

1. 薄毛、男性型脱毛症(AGA)などにナイアシンとプロスタグランディンD2拮抗薬

数年前から、薄毛、男性型脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)などの
毛髪トラブルにナイアシン(ビタミンB³)や、ある種((PGD2)のプロスタグランディン受容体拮抗薬が
効果的との評判が広まり、副作用に疑心暗鬼ながらも利用する人たちが絶えないようです。

ナイアシン(VB³)は人体の生化学的経路のほとんどに関与しているといわれ、
様々な健康効果を得るための酵素反応に関わる補酵素の王様です
スーパーな働きをするだろうことは疑う余地がありませんが、それだけに
過剰摂取の副作用もスーパー。
ナイアシン(VB³)の優れた補酵素の働きはエネルギー代謝を行うミトコンドリアで顕著です。
それ故、医療分野でのナイアシンは主として脂肪酸代謝機能改善に使用されていますが、
欧米では5年ほど前から、肥満予防、解消にサプリメントで過剰摂取する人が急増。
重篤な副作用が問題となっています。

ナイアシン(VB³)解説は下記に
「ナイアシン(NAD+ NMN)がサーチュインとコラボレーション:
長寿と癌(がん)研究の新たな潮流 」



2. ペンシルバニア大学医学部クリグマン研究所(Kligman Laboratories)の論文

話題の出所は2012年に発表されたペンシルバニア大学医学部
クリグマン研究所(Kligman Laboratories)の論文。
クリグマン研究所は皮膚科におけるステロイド依存(Steroid addiction)の危険性を
始めて警告したことや、囚人の皮膚で人体実験を行った(?)ことで著名な皮膚科の
世界的権威アルバート・クリグマン博士(Albert M.Kligman:1916-2010)の研究所。
クリグマン博士は全米初とも言われるアレルギー反応、化粧品の安全性など皮膚の
パッチテストを受託する「KGL Skin Study Center」の創始者でもある伝説の研究者です。

話題の論文は
「Prostaglandin D2 inhibits hair growth and is elevated in bald scalp of men
with androgenetic alopecia」
「プロスタグランディンD2(PGD2)が毛髪の生育を妨げ、頭皮の男性型脱毛症(AGA)を加速させる」
詳細は省略しますが、
クリグマン研究所によれば、80%の欧米白人種(コーカシアン:Caucasian)は多かれ、少なかれ
男性型脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)を経験するが、その原因が男性ホルモンで
あることまでが解っていても、仕組みが解明できていない。
したがって真の創薬をすることが出来ないのが現状であり、仕組み解明が急がれているとのこと。
これまでに解明できたのはプロスタグランディンD2(PGD2)が毛髪の生育を妨げていることで、
PGD2を安全かつ長期的に制御できればAGAの解消に繋がるのではと推定しています。

クリグマン研究所は、現存のフィナステリド(finasterideメルク社:抗アンドロゲンの服用剤)や
ミノキシジル(minoxidil:ファイザー社:高血圧症用の血管拡張服用剤から生まれ、
2%溶液のロゲイン、1%と5%溶液のリアップなどの名で呼ばれる外用溶液の原料)は一応の安全面からは
認可する国があっても、いずれも効能や、その持続性がはっきりせず、急性、遅効性の副作用が
予想されるために適切ではないと見ているようです。
新しい育毛剤も次々に発売されていますが、コンセプトはミノキシジルと同じ。
劇的な解決には至らないのでしょう。
植毛による再生医療(transplantation)には筆者らのコメントがありません。



3. プロスタグランディン受容体拮抗薬のラロピプラント(Laropiprant)

毛髪トラブルに悩む人々にこの論文の反響は大きく、ミノキシジルの効能に
飽き足らない人々はナイアシンや処方薬のプロスタグランディン受容体拮抗薬に殺到したと
いわれます。
最も話題となったのがメルク社(Merck & Co Inc)のラロピプラント(Laropiprant)でした。
(商品名はコルダプティブ:Cordaptiveか欧州向けのトレダプティブ:Tredaptive、
同様な医薬品にアクテリオン社:Actelionのsetipiprantがあります)

ラロピプラントは脂質の代謝異常から心臓血管病に進行するのを防ぐ医薬品として
開発されたある種のプロスタグランディン受容体拮抗薬
Prostaglandin receptor antagonist)ですから、プロスタグランディンD2が原因の
毛髪トラブルに悩む使用者からすればラロピプラントでPGD2を制御できれば
脱毛、薄毛が防げるのではと連想します。
ところがラロピプラントは医薬品ですから成分の副作用は当然としても
ナイアシンが高単位で合剤となっていますから、その相乗副作用も考えられます。
いつもながらあの手、この手で入手した人々が即効を求めて大量使用、
重篤な副作用が発生しました。
ラロピプラントは結局、悪玉コレステロール減少効果が認められず、
重篤な副作用があるために、発売後しばらくして廃止になった医薬品。
米国内での使用がFDAによって承認されたこともありませんでした。



4. プロスタグランディン(prostaglandin:PG)と、その合成経路

プロスタグランディンは痛みや炎症に関係する内因性生理活性物質(生体調整ホルモン)の化合物群。
1958年に羊の精嚢から分離され、研究が進展しましたが
1971年に英国の薬理学者ジョン・ベイン(Vane Sir John R).によって詳細が解明されました。
ジョン・ベインはサーの称号を与えられ、1982年にノーベル賞を受賞しています。
永らく未明であったアスピリンの作用機序解明はプロスタグランディンの発見によるものです。

プロスタグランディンには幾つもの合成経路がありますが、いずれも脂肪酸から作り出されます。
大別して、善玉といわれる*ガンマリノレン酸(GLAと略す)からのプロスタグランディン1と、
オメガ3と呼ばれるEPAエイコサペンタエンから作り出されるプロスタグランディン3があります。

現在プロスタグランディンはその化学構造の違いによりAからJ迄命名されています。
順序がおかしいですが、最初に見つかったのはEとF。
PGE1やPGE2の様に番号が振られていますが、この番号はその化合物の二重結合の
数を表しています。



5. アラキドン酸から作られるプロスタグランディンD2(PGD2)

オメガ6のリノール酸(C18H32O2分子量280.45)から作られる最初の生理活性物質が
アラキドン酸(arachidonic acid:AA)。
プロスタグランディン2(PGD2)はアラキドン酸経由で産生されます。
炭素が鎖状につながる分子構造(炭素鎖構造)から、アラキドン酸もオメガ6とよばれています。

細胞の細胞膜リン脂質からアラキドン酸が遊離されると、細胞の種類ごとに特定の酵素が働いて
プロスタグランディン、ロイコトリエン、ヒスタミンなど様々な二次、三次の生理活性物質を
100種類以上合成します。
大別して、酸素添加酵素シクロオキシゲナ-ゼ(COXと略す)によって、
各種のプロスタグランディン(PGと略す)やトロンボキサン(TXと略す)が生成される代謝系。
この代謝回路は炎症と血流に関連する重要な回路であり、心血管対策薬、鎮痛剤等は
この代謝回路に働くように設計されています。
もう一つは酸素添加酵素リポキシゲナ-ゼによって5-ヒドロ_ペルオキシ_イコサ_テトラエン
(HPETEと略す)、
ロイコトリエン(LTと略す)、リポキシンなど過酸化脂質が生成される代謝系に分けられます。

アラキドン酸から合成された上記のタイプ2型の*エイコサノイドと呼ばれる代謝物は
血圧や免疫機能の維持に大切な働きをしますが、過剰となった場合は
動脈硬化、高血圧、心不全、脂肪肝、アレルギー性湿疹、アトピー性皮膚炎といった症状の
原因物質となります。
近年は安価な植物性リノール油で知られるトウモロコシ油、大豆油などがサラダオイルや
加工食品の主流ですから、食生活はアラキドン酸を作るリノール酸が過剰に
摂取されていることがほとんど。
急増している脱毛症の抑制、進行防止などにはアラキドン酸生成の低減が役立つかもしれません。

「リノール酸を過剰摂取する米国民:
米国厚生省ラムスデン博士が細胞炎症の危険性を警告」

*エイコサノイド(eicosanoids)
脂肪酸から作られる「エイコサノイド」は
「プロスタグランディン」「プロスタサイクリン」「トロンボキサン」「ロイコトリエン」という
4つの生体調整ホルモン物質の総称ですが、摂取 している脂肪酸の種類によって
「エイコサノイド」のタイプは異なります。
エイコサノイドの語源は上記の生理活性物質が20(eicosa)の炭素鎖構造で構成される
多価不飽和脂肪酸だからです。

*ガンマリノレン酸(gamma linolenic acid)
ガンマリノレン酸は牛乳やバター、オートミールに含有されますが、リノール酸からも
体内で合成することができます。
しかしながらアルコールやトランス型脂肪酸等の過剰摂取、ストレス過多は合成を妨害します。
またガンマリノレン酸は身体がインスリン過多の状態(大食い、高糖分などでの
血糖値を高くする環境)にあると、
プロスタグランディンD2を作るアラキドン酸へと変化してしまいます。

(参照リンク)

最終更新日 2021年5月2日

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